よるのおわり

日々を愛でる

サバチャーハン

スーパーで,真空パックに入った魚が安くなっているのをみつけて,どうせ字は読めないからなあ…と開き直って,よく考えずにとりあえず買い物かごに放り込んだ.家に帰ってよく見ると,サバの特徴的な模様が見える.袋からは燻製の匂いがする.サバの燻製らしい.


さて,昨夜は,帰宅してから買い物に行こうとしていたけれど,面倒になって家から出るのをやめてしまった.夕飯はありあわせの食材で作らねばならない.ちょっと考えてから,朝インターネットで調べたサバの燻製の炊き込みご飯というのを思い出した.そして,今から炊き込みにするわけにもいかないけれど,冷凍庫に凍らせたお米があったのに気づいた.

というわけで,サバの燻製のチャーハン.凍ったお米を湯煎で溶かしながら (この家には電子レンジがない),真空パックを開けてサバを解体する.皮は香ばしく,身はほろほろと取れて,良い感じ.皮も柔らかくなっていたので,一緒に入れてしまおう.余った分は冷凍しておく.

まずはニンニクを炒めて,マッシュルームとパプリカも投入.これはあとで,アボカドとトマトとフリカデラとチーズとあわせて,サラダにする.むふふ.

サラダの材料を炒め終わって脂が乗ったフライパンに,お米を入れて炒め,脇に寄せたらサバを投入.塩すこし.脂が乗っていて,良い匂いが漂ってくる.サバをさらに脇に寄せて,溶き卵をフライパンの真ん中に投入した後,お米と混ぜ合わせる.そして最後にレタスの外側の硬い部分をちぎり入れて,しゃしゃっと混ぜた後に火を止めて,胡椒をひとふりして完成.


チャーハンもサラダもとてもおいしかったけれど,サバの燻製の匂いは服やまな板に染み付き,その夜ベッドに入ったときにも,かすかに香ばしい匂いがしたのだった.

強風

朝から風が強く,寒い一日だった.

行きの自転車は追い風ですいすいと楽に進み,しかしこれは帰りが大変だな…と考えた.夕方から雨が降るらしいので,早めに帰宅する.案の定,帰りはもろに向い風を受けて,場所によっては歩く早さと変わらない.道路を走ってもくさくさしてくるだけなので,夕暮れ間近で暗くなりかけている荒野に入り,砂利道を進む.灌木に風が遮られるためか,わりと快適に進む.

やっと帰宅.出掛けにチョコレートを食べすぎてそのあと運動したために血糖値が低下しているのか,あるいは単に体が冷えたからなのか,体が震える.熱いカプチーノをつくって飲み,体をおちつける.

家から見おろす川は,夕闇に真っ黒に沈んで,強い風にあおられて水面がびゅうびゅうと波立ち,まるで龍が遡ってくるかのよう.真夜中にはガラス窓に雨が打ちつける音がゆめうつつに聞こえた.

ヘルシンキのサウナ

ヘルシンキに滞在している友人とともに,モダンなサウナに行く.
中心部から外れた海辺にあり,最寄りのトラムの停留所からさらに歩いて10分くらい.ちょうどよく雪なんかも降ってきて,寒くなってくる.絶好のサウナ日和ではないか…

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中に入るとおしゃれなレストランが広がっていて,暖かい.サウナは左手の奥のほうとのこと.コートを脱いでしばし待つ.前のスロットのお客さんたちが出ていった後,更衣室で水着に着替え,シャワーを浴びて,いざサウナへ.

サウナ自体はふた部屋あるらしく,一方はスモーク,もう一方はストーブとのこと.友人によると,スモークサウナのほうは,最初に薪を燃やした煙を室内に充満させて,時間を置いた後に人が入る形式とのこと.こちらのほうが煙の香ばしい匂いがするのかもしれない.

最初にスモークのほうに入ると,内部はほぼ真っ暗で水蒸気がもうもうとしており,そしてなにより熱い.水蒸気が肌にべったりと貼りついて,動くと皮膚がひりひりするし,鼻や耳などの末端がびりびりしびれて焼けていくような感覚がある.本場のサウナってこんなに熱いものなのか…! と思いながら数分がまんするも,限界に達して外に出る.私以外誰も入っていなかった.

ストーブのほうに入ると,こちらは壁のひとつが窓ガラスになっていて,外の灯りが入ってくる.温度も充分がまんできる程度で,人もたくさん腰かけている.先にこちらに入っていた友人としばしおしゃべりし,その後ふたつのサウナの中間にあるシャワー室でRと合流する.サウナのほかにも,暖炉を備えた談話室やバーカウンターがあって,お酒を飲んだりくつろいだりしながら楽しめるようになっている.(もちろん無料の飲水コーナーもあった).

スモークのほうに再挑戦すると,今度は全然熱くないし,水蒸気も多くはない.人の数もかなり増えている.しばらく座って観察していると,

  1. 熱源の蓋を開けると温度が上がる
  2. 熱源に水を注ぎ込んで水蒸気を発生させると体感温度が急増する

という法則に気づいた.最初に入ったときには,おそらく,蓋が開けっ放しになっていて,水がたくさん追加された後だったのだろう.あまりに熱すぎて,ほかのお客さんも逃げていたに違いない.


海に面したデッキ状になっているベランダに出ることもできる.雪はあいかわらず降りつづいている.そしておもしろいことに,海に飛び込むこともできるのだった.デッキの先端にははしごがついていて,暗い夜の海に浸かって,また帰ってくることができる.

サウナで充分に体を温めて,海に飛び込む.一瞬で体が冷えて,足の爪先の感覚なんかなくなってしまうくらい,海水は冷たい.震えながら室内に帰り,サウナに入って,ほっとするのだった.血管が急に縮まったためか,一度は頭がくらくらしてしまった.

友人によると,このあたりはデンマークの島々によって海水がせき止められ,淡水が優勢になるので,塩分濃度が低いのだそうな.塩分濃度が高い海はなかなか凍らず,もっと水温が下がって氷点下になることもあるという.おそろしい….今でも,暗い冬の海の冷たさと,波の強さと,このはしごを手放したらそのまま流されていってしまうのではないかという恐怖を思いせる.


ほかのお客さんと会話したり,置いてあったサウナ専門誌を読みながら暖炉のスペースで休憩したり,友人はビールを飲んだりしながら,予約していた2時間をあっというまに過ごした.こういうサウナが今住んでいる家にあったらいいのにな…などと思う.そして,次にフィンランドに行くときには,もっと伝統的なサウナも体験してみるのだ.

ヘルシンキ1日目

年末,朝早く家を出て空港に移動した.電車のなかでチーズをのせたパンを一切れ,空港ではチェックインの後に,チーズとハムをのせた黒パンのサンドイッチとリンゴを食べた.空港ではどのお店もまだ開いていない.向かう先はヘルシンキ.1時間半のフライトで,LCCだけれどコーヒーが出る.

あっというまに到着して,しかしまだ,やっと空が明るくなってきたくらい.中心部に移動するために1日券を購入し,電車に乗り込む.電車の中はオレンジ色の光でやさしく照らされ,電車の外には雪景色が広がっている.駅に停車して扉が開くと冷たい空気が入ってくる.

はじめに,通過駅のひとつにある「光の教会」.うっすらとした雪景色の郊外の駅から歩いてすぐ,白樺の林の奥に.教会の中はだいぶ暖かく,そして白くてやわらかな光に満ちていた.天井からランダムにぶらさがったランプが,薄暗い空に浮かぶ星のように,澄んだ光を発している.ここで数時間ぼーっとしていてもいいけれど,今回の旅ではそうした余裕が許されていないので,早々と切り上げて先を急ぐ.

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ふたたび電車に乗って,ヘルシンキの中央駅へ.街を歩いて集合場所へ.時間はまだある.しかし,年末のためか,岩の教会もカンピ礼拝堂も開くのは午後からとのこと.途中ストックマンに寄って,地下の食品コーナーでパンを買っておやつにする.体が温まっていく.

集合場所のオールドマーケットは年末のため閉店中.集まった友人たちと相談して,近くのレストランへ.サケのスープとホットワインで温まりながら,話に花を咲かせる.この時期のヘルシンキは,月間の日照時間が20-30時間くらいしかないのだそうな.あとは曇りかみぞれ混じりの雨とのこと.たしかに街中では,雪が一切見られない.

フェリーの時間にあわせて切り上げて,チケットを買ってスオメンリンナへ移動する.15分ほどで島につき,あてもなくふらふらと散策する.曇った空に冷たい風がびょうびょうと容赦なくふきつけて,すさまじいところだなと思う.ぽつぽつと家もあるけれど,人の気配があまりない.夏の別荘なのだろうか.厳冬期には流氷もやってくるらしい.見てみたいな.

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予定していたのより早いフェリーに乗り,またヘルシンキへ.フェリーから降り,目の前のクリスマスマーケットに一目散に駆け込み,たまらずホットワインを買って飲む.甘いアルコールがおなかをあたためて,やっとひとごこちついたような気がする.

次の予定まではちょっと時間があったので,ヘルシンキ大聖堂へ.まだ16時過ぎなのに街は真っ暗で,暗闇のなかで白く浮かびあがる大聖堂がキーンとして見える.前の広場には大きなクリスマスツリー.内部は荘厳なつくり.まだまだ時間があったので,あらためてストックマンへ.いろいろな階を物色してまわり,人びとの興味の合致したキッチン用品のコーナーでしばし時間をすごす.ムーミンカフェも見学する.マリメッコもひやかしにいく.

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そうして,トラムに乗って,ちょっとはずれにあるサウナへ.サウナのことはまた詳しく書くとして,ここで2時間をたっぷり過ごして,すっかり温まった.

サウナを出る頃には湿った雪が降り始めている.足早に移動し,夕飯を予約しておいたレストランへ.店員さんがとてもにこやかで,サラダもメインもワインもとってもおいしく,それぞれの近況やこれからのことなんかを楽しくおしゃべりしながら,またあっというまに2時間が過ぎる.

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レストランを出た後は友人と別れ,さらに湿った雪の中をホテルへ急ぐ.なぜか大混雑しているトラムに乗って,近くの駅で降り,しばしホテルの場所を探し歩いた後,チェックインし,部屋に移動して,シャワーを浴びて,23時頃にばたりと倒れるように眠りについたのだった.明日の朝も早いのだ…

冷たい手

海までたどり着かないかなと思って,今日も走ってみたけれど,行けども行けども荒野がつづく.荒野に広がっているのは要するに湿地なのだけれど,先週末や今日みたいに寒い日は地面が凍って,長靴を履いてなくても,ある程度荒野のなかに分け入っていける.

このへんかなとあたりをつけて,柵があいているところから荒野のなかに分け入ってみた.湿っぽい地面のなかで,しっかり凍って草の根ががっちりしていそうなことろを選んで,慎重に足を運んでいく.それで100メートルばかり進んで,さてと前方を見上げても,むこうに海なんてちっとも見えず,ぬかるんだ荒野がずーっと広がっているだけ.そのときの絶望感といったら! なぜだか知らないけれど,どうしても海まで到達することができないのだった.

帰りは向かい風になり,それほど風が強いわけでもないのだけれど,走る速度に風の勢いが加わり,手が冷えていく.走り終わる頃には,まるで凍ったようになって,何かにぶつけたらパリンと割れてしまうんじゃないかと思えてくる.

あたたかい家のなかに入り,ぬるま湯にじっくり手を浸した後,カプチーノを作って飲んだ.どこかに定住することになったら,きっと,こういうエスプレッソマシンを買うのだ.