よるのおわり

日々を愛でる

鳥のこと

朝,開園前の植物園を通ると,芝生にカモが2羽座っていた.芝生をぶちぶち引き抜いて,食べている.近よると,ちょっと落ち着かなさそうに立ち上がって,微妙に距離をとろうとする.けっこう冷え込んでいて寒い朝だったので,なんだか悪いことをしたように思う.

駅のホームでは,枕木にできた氷の塊の周りを歩きまわって,くちばしをつっこんでいるハトをみかけた.餌が隠れているのだろうかと思ったのだけれど,もしかしたら氷が溶けた水を飲んでいたのかもしれない.しゃがみこんで写真を撮ろうか迷っているあいだに,電車がやってきて,ハトは飛び去ってしまった.

植物園の池も,家の下を流れる川も,ここしばらくの冷え込みでだいぶ凍っている.今朝には小雪がちらついて,氷の上に落ち,ちょっと早めに帰ってきたときにも,白いボツボツが氷の上に残っていた.家の近くの川では,鳥が足を凍らせて閉じ込められているように見えたけれど,近づいてみるとそれはただのゴミだった.

市庁舎の前ではハトが死んでいた.

深夜のスプーン

飛行機のなかではなまじよく眠れてしまったために,真夜中に東京に着いてからもぜんぜん眠くない.山手線に乗って,予約しておいたゲストハウスに行き,シャワーを浴びて,日付が変わる頃に布団に潜り込む.しかし眠れない.飛行機のなかでよく眠れてしまったことを抜きにしたって,だいたい,体内時計はまだ昼過ぎなのだ.

2時間ほど,眠りと覚醒のあいだをさまよったあと,もうこれはしかたないとあきらめて,深夜の東京を徘徊することにする.小さいショルダーバッグを肩にかけて,もし,どこか居心地のよさそうな店が開いていたら,読みかけの『パルムの僧院』や論文を読むのだ.(しかし結局読まずに帰ってくることになる)

東京の都心部は真夜中も起きている.これは22時過ぎの電車に乗ってゲストハウスに移動する途中でも感じたことだけれど,彼の国では人びとがとっくに家へ引き払って,暖かいソファーやゆったりしたりベッドに潜り込んだりしているような時刻にも,東京では仕事帰りの人びとが電車内にあふれている.午前3時の街も半分は起きていて,24時間営業のコンビニや外食チェーンは煌々と明かりをともし,どんなに狭い小さな道を歩いていても,かならず誰かとすれ違う.

街中には雪の溶け残りがかしこに見られ,ゴミが散乱している.ああ,これが東京だ…という気がする.100円ローソンでネーブルオレンジを買って,手袋をした手でもてあそびながら歩きつづける.

インド,ネパール,中国,そうした小さなエスニック居酒屋にもまだ明かりがついていて,カラオケをしたり,テレビを見たりしながら,そうした国の人たちが楽しそうにしている.コンビニの店員さんもほとんどが外国の人たちである.新宿にほど近い土地柄が関係しているのかもしれないけれど.

機内で食べきれなかったごはんを食べるために,コンビニでスプーンをもらおうとする.レジに行き,のど飴を買って,ついでにスプーンをくれませんか…?と言う (あまり行儀のよくない行為であることは承知している).そういうのはダメなのですが…では5円ください,と店員さんに言われる.まあ,弁当やスープも買わずに,そうだよね…と思いつつ,代金に加えて5円玉を差し出すと,店員さんはちょっと困ったようにして,それを募金箱に入れて,スプーンをくれる.思わずその人の顔を見て,申し訳ないような気持ちで「ありがとうございます」と言う.

宿に戻り,機内食の残りのビリヤニと,さっき買ってきたネーブルと,同じく機内食の残りの,キャラメルソースにひたったチョコーレートケーキを食べる.時刻は4時を過ぎていた.

待ち合わせの時刻まであと3時間.今朝はもう,眠るのはよすことにする.

透明なカエル

河口に近い沼地のようなところでフィールドワークをしていた.

海水に住む透明なカエルを2匹,誤って河に放してしまい,これはいけない…!と思って手に持っていたノギス状の道具であわてて叩き殺す (生物多様性の撹乱を恐れている).1匹はおそらく仕留めたけれど (透明で目だけが黒いのでよくわからない),もう1匹は流れていってしまった.

呆然としていると,まわりの水に,同じ透明なカエルがたくさんいることに気づく.

そんな夢.

タリン・ヘルシンキ2日目

昨夜の残りのブラッドソーセージ,スーパーでいっしょに買ったドライフルーツとナッツがぎっしり詰まったパン,持ってきたコーヒーを朝食にして,ゆったりした後,9時頃にまた旧市街へ繰り出す.

2日目ともなるとこの中世のきれいな街並みにも慣れてきて,なんだか不思議な気分.見晴らしの良い展望台からは,中世の家々の向こうに,近代的な高層ビル群が並ぶのが見える.物価が比較的安いのを良いことに,生活品などを買ったりする.
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12時前にホテルに戻ってチェックアウトし,スーパーでお惣菜とパンを購入して,フェリー乗り場へ.お惣菜は昨夜から目をつけており,色とりどりのさまざまな種類が量り売りで入れ放題.そしてなにより安い.フェリー乗り場のテーブルでお昼にしたところ,味もすばらしくて,うっとりしてしまう.

13時半のフェリーでエストニアを後にした.船のなかでは歌を聞いたコリアンダーの香りのついたビール (Põhjala Meri) がフェリーのなかで飲めたらしいのだけれど,そのことに気づいたのは下船間近でドリンクの注文が終わったあとだった.今度機会があったら探してみよう…

ヘルシンキに到着した頃には,もう夕闇が街を覆っていた.トラムに乗って中心地へ.行きには見られなかった教会群を見て回り (特にこれといった感慨はなし),その後に歴史博物館へ.博物館はめっぽうおもしろく,フィンランドの古代から現代に至るまで,さまざまな側面からの展示が楽しい.

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有名なひとたち

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ベビー・ボックス

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サウナ用のひしゃく

ストックマンの地下でお惣菜とビールを買ったあと (こちらは指定して個別に重さを測ってもらう形式のため,実際に購入できた種類は少ない),電車に乗り込み,空港へ移動.先ほど買ったお惣菜で夜ごはん.そして飛行機に乗って,帰国(?).

駅から寒いなかを帰ってきて,荷物をとりだして,シャワーを浴び,これからはじまる年末年始のことを楽しく想いながら,ベッドに入り込んだのだった.

ここ数日あたたかい気候がつづいていて,朝,家を出るときに変な感じがする.寒さを覚悟してドアを開けたのに,ゆるんだ空気が満ちていて,拍子抜けするような感じ.日中はコートを着なくても,建物と建物のあいだを移動できるくらいになり,そのまま温室に入ると,じとっとして気持ち悪い.(ふだんは,はぁあたたかい…という気持ちになる).

昨夜は,実験が遅くまでかかってしまったのと,あたたかかったのを良いことに,ちょっと遠出して,外食をしてきたのだった.ブリュワリー併設のレストランで,バーガーをつまみながらビールを飲む.物価が高いのは相変わらずなのだけれど,近くにあったら通いたくなるようなところ.夜中に帰宅して,23時頃に就寝.

今朝はしかし,ちょっと冷え込んだようで,家のあたりでは濃い霧が漂っていた.じっと見ていると,霧は空気の動きにしたがってふわふわと動いており,いつもは見えない空気の動きが可視化されているようだった.植物園にも霧がかかっていたら良いな…と思いながら大学にやってくるも,街中にはあまり霧がかかっておらず,ふだんと同じような様子なのだった.