よるのおわり

日々を愛でる

揖保乃糸

昨夜、やけに眠くなってしまって、20時過ぎに眠った。そのせいか、朝は早く目がさめて、3時くらいにクーラーがタイマーで切れたのをうつらうつらと知り、窓を開けて外の涼しい風を入れていた。風が強くて、木々がざわめく音が聞こえた。

覚醒に半分足を突っ込んだ睡眠を1時間くらい過ごした後に、ふと、起きるか、と決意して、起きてくる。夏至を過ぎているから、この時間ではまだ暗いままになっている。ヨーグルトとパンをすこしつまみ、昨日読んだ論文のまとめを書いていき、ひさびさにきちんと朝ごはんを作ろうかなと思い直して、ナスと豚こまの汁を作り、素麺を茹でて、朝ごはんにする。

揖保乃糸をはじめて使ってみたのだけれど、コシの良さに驚いた。プツリプツリと歯で噛み切れる感触。これまでの安い素麺はただ小麦を整形したもののように思えてくる。

昨夜、コーヒーを淹れたいと思っていたことを思い出して、豆を挽いてアイスコーヒーを淹れて、マグに入れて職場で飲むことにした。

島の夏

今年は、こんな北の島なのに、ずっと暑くて、しかし毎年失ってしまう真夏の暑さをきちんと取り戻せたような気がして、愉快に先発の日々を過ごしていた。朝早く起きて原稿を書き進め、日中は働き、夕方からあとはメールを返したりして早く寝てしまう。お仕事にさく時間こそ少ないけれど、すばらしい日々。

f:id:tsutatsutatsuta:20180813202940j:image

 

原稿が完成し、人びとが合流してきて、Rもやってきた頃から天候が崩れはじめ、どんより曇って細かい雨混じりの寒い風が吹くような、そんな日々が続いた。頭痛がはじまり、慢性的に気力が吸い取られていくような気分。

f:id:tsutatsutatsuta:20180813202947j:image

 

結局、コンディションは不良のまま、最終日を終えて帰ってきた。最初で最後の日曜の一日、朝からバスで体育館に行って働き、またバスに乗って帰ってきてお昼にカレーを食べ、ひと仕事してからふたたび外に出て、ソルベのレモンタルトとコーヒーで休憩し、おみやげを買って帰ってきた。その日は夕食もカレーだった。

f:id:tsutatsutatsuta:20180813202854j:image

熱帯夜

真夏のトーキョーは最高である、なんて思いながら眠った。

ちょうど目が覚めたのは、夢のなかで、大学の学園祭みたいなところで、ひとり舞台で演劇の大作をやることになっており、開演時刻をすぎても準備が間に合わず、しかしそもそも演技はまったくの素人の私がそんなことしていいのだろうか…と恐怖にかられつつも、なるようになるさ…!と開き直っていたところだった。これまでは、朝がたはクーラーを止めてもじゅうぶん涼しかったので、時計も見ずにクーラーを止めて、窓を開けてまた寝入った。

 

はずが、暑くてよく眠れない。枕元で首を振っている扇風機も助けにならない。うつらうつらして、背中に汗をかき、しばらく意識が覚醒と睡眠のあいだをふらふらさまよった後、起き出してトイレに立つ。そこで時計を見ると、なんとまだ2時を少し過ぎたくらい。もう早朝だとばかり思っていたのに。どうりで暑いわけだ。

窓を閉め、ふたたびクーラーをつけて、布団に倒れこみ、今度は朝まで眠る。目覚めたとき、カーテンの外が明るかったので、そうとわかる。目覚めたとき、今日はなにか大事な用があったはずで…としばし考え込み、カレンダーを見て、やっと、そういえば出立の日だったと思い出す。

総合病院

9時から検診があり、長いコの字を通り、駅を越えて、丘の上の総合病院へ。駐輪場には南京錠で閉じられた道があり、丈の高い藪がもうもうと茂っていた。

長い歴史を経てきたことがひと目でわかる館内には、すでにたくさんの人びとが待っており、強烈な夏の光で真っ白になった館内で、ソファに腰掛けていた。

ふと上を見上げるど、埃をかぶったシャンデリアが下がっており、向こうの壁にはさえない大きな油絵もかかっている。そういえば外には、壊れかけ始めている立像のようなものもあった。

靴と素足

電車の隣に座った夫婦が、ふと床を見たあとに話をはじめ、床に置いていたリュックを取り上げる。何事かと思って私も床を見ると、水がどこからか流れてきている。慣性の法則にしたがって、電車の出発や停止にあわせて、あっちに行ったりこっちに来たり。

どこが水源なのだろうと向こうのほうを見るけれど、それらしいものはない。ただ、水流の真ん中のところ、水の量がもっとも多い場所に、ピンクのスニーカーを履いた女性が座っている。スニーカーの足の裏は、ばっちり水源の水たまりを踏んで、しかし本人は一向に気にしていない様子。

実はマーメイドなのではなかろうか、と思いながら電車を降りた。

 

帰り道、お墓のところを通ると、10メートルほど手前を、喪服を着たおばあさんが歩いている。黒い靴は束ねて片手に持ち、素足で歩いている。真夏のこの昼下がりに、熱せられたアスファルトで足の裏をやけどしてしまうのではないかとらひやひやする。

道のかどのところに、おじいさんが2台の自転車を引いてくるのが見え、おばあさんはそこに合流した。おじいさんが放った黒いビーチサンダルを履きながら、おばあさんはハンドバックを荷台に置き、自転車にまたがったところを、私は通り過ぎていった。