ベランダに出てLを寝かしつけていた。向こうのほうに見えるショッピングセンターの立体駐車場のなかでは、この時刻でも時おり車が発進したりしており、テールランプの赤い光やヘッドランプがゆっくり旋回するのが見えたりした。金曜の夜、自分ではない他のたくさんの人の、それぞれの人生に想いを馳せる。
頬を透かして見る世界
ふだん意図的に眠りにつくときには、頭のなかで同時にふたつのことを考えるのだけれど、今回は頬から皮膚を透かして外を見ていた。頬から透けて見える世界は現実とはちょっと違っており、若干、私を喜ばせるような、私におもねるような、そんな光景が、すこし濁った狭い視界のなかに見える。考えてみたら角膜だって皮膚の一部なのだし、頬を透かして外を見るのも、目で見るのも、そう根本的には違わないのかもしれない。
飛行機のなかで夜を明かした翌日、昨夜と同じく頬から外を見ることで眠りにつこうとしたけれど、あまりうまくいかなかった。