よるのおわり

日々を愛でる

book

2021年に読んでおもしろかった本

2021年は仕事も育児もあまりにも動きが目まぐるしく、落ち着いて本を読むような時間を作ることができなかった。それはつまり、心に余裕がなく荒廃していたということでもある。本は読みたいのだけれど、読み始められないし、読み始めても読んでいられない。…

つらさと読書

最近意図的に本を読む時間を作っている。いや、時間を作るとかそんな高尚なものでもなくて、料理を作る片手間とか、RとLがお風呂に入ってるあいだとか、そんな十数分にちょっとずつ。そんな時間があれば仕事にまわしたいくらい逼迫してはいるけれど、さりと…

2020年に読んでおもしろかった本

今年読んだのは31冊。去年と同じくらい。本当はもっと読みたいのだけれど、まあ仕方ないか。関東に戻ってきて、冬が寒く、家にひとりのときにお風呂にお湯をはって浸かりながら本を読むのが楽しかった。いくつもすばらしい作品を読んだ昨年に比べると、今年…

リンゴ畑の10年

ここ10年間で読んだ本のなかで一番はなんだろう……ということを考えていた。本そのものの評価で言うと、まったく、ひとつに決められるわけもないのだけれど、いちばん大事な本というとすぐに決められる。それについて書いてみようかなと思う。それは、エリナ…

ヤンソン短編集

トーベ・ヤンソンの全集を読んでいて、これは前に読んだことがある……という短編にいくつも出会った。調べたら2016年11月に『トーベ・ヤンソン短編集 黒と白』、2017年12月に『トーベ・ヤンソン短編集』を文庫で読んでいた。話の筋はほとんど忘れていて、同じ…

ロヨラアームズの昼食

あるときの心情に驚くほどマッチする本を読んでいることに気づき、ページを繰る手が止まらなくなり、最後の1文を読み切って、それまで呼吸を忘れていたかのような気分で「ほぅ……」と天井を見上げて息を吐き出すようなときがたまにある。たいていは静かで沈み…

2019年に読んでおもしろかった本

今年読んだ (仕事のものでない) 本は30冊くらい。海外文学を中心に読んで、きわめてすばらしい本にも出会った。生活のリズムを取り戻すために本を読んでいたようなところがあって、短い時間に読んで気分を切り替えられる短編が多かったかもしれない。 特にお…

灯台の話

11月1日は灯台の日だということらしい。最近 (といってもここ数年だけれど)、灯台が登場する小説をよく読んでいる。そしていずれもおもしろい。せっかくなので紹介してみることにしようかな。ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』 静かな静かな物語。人の心理や会…

2018年に読んでおもしろかった本

2018年はそこそこ本を読めたような気がする。数えてみたら60-70冊くらい。でもまあ、まだまだ時間は確保できていなくて、積ん読は積み上がっていくばかりなのだけれど… そのなかで特におもしろかったものをあげておく。選に漏れたけれど、ほかにも、『いのま…

ホビットの冒険

寝る前に『ホビットの冒険』を読んでいたからか,おかしな夢を見る.市民マラソンのランナーたちをもてなすために,お昼を出さなければならない.量が足りないので,コンビニに買い出しに行く.近くのコンビニはそれでもけっこう離れていて,自転車に乗って…

2017年に読んでおもしろかった本

今年も今年でほとんど本を読めなかったけれど,すてきな本にはいくつも出逢った.これを見返して改めて思ったけれど,最近は,静かな物語が好きな時期なのかもしれない. 武田百合子 『遊覧日記』 ひと昔前の東京や京都を歩いているような気分になる.温かさ…

2016年に読んでおもしろかった本

今年は,論文を読んでばかりで,あまり本を読めなかった.来年はもっと読めると良いのだけれど… バルガス・リョサ (木村榮一 訳) 『緑の家』 複雑に絡み合って展開される物語のなかから,少しずつ全体像が見えてくる.まるで密林の茂った木々をかき分けなが…

凝視

以前,こんなことを書いた.同様のことが今読んでいる本に出てきたのだった. Business being over then, the Old Man turned his attention to me. Natives can stare and yet not be rude. I do not know whether this contradiction is in the quality of…

雪の朝

いつものように暗い冬の朝、雪はあいもかわらず降りつづく。*という書き出しの一文で、梅雨のような街並みの見える車窓から、私は一瞬にして、フィンランドの静かな暗い朝に飛んでいた。ああ、読書ってすごいなと思う。* トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』

2014年に読んでおもしろかった本

「2015年に読んでおもしろかった本」を書いた後に,2014年にはこれができていなかったことを思い出したのだった. というわけで,書き出してみる.そうして納得.数が多すぎて,どうやってまとめよう…と悩んで,そのままにしていたのだった. 武田百合子『富…

2015年に読んでおもしろかった本

昨年読んでおもしろかった本を.もっときちんと解説したかったけど,そう考えていても時間が経つばかりだったので… トルストイ『アンナ・カレーニナ』 名作が名作と言われるには,そう言われるだけの理由がある,と十分に納得させてくれる作品.レーヴィン,…

観覧車

デジャヴともノスタルジーともちょっと違う,ほっとしながら怖い夢を見るような不思議な感覚を呼びおこされるものが私にはあって,そのひとつが,観覧車だ.観覧車に出会うと,はっと,その周りの空間が奇妙なものに,なんだかねじれているようなものに錯覚…

2013年に読んだ本

今年読んで印象深かった本を振り返ってみる.いちばん,と言われるととても困るけれど,あえて挙げるなら,吉田篤弘『小さな男*静かな声』になるのかな.さらさらと流れていくのっぺりした日常にアクセントをつけて,無機質なさみしさと共存していくふたりの…

ひとり

どこかで,基本は「一人」であると考えている.一人で食べて,一人で考えて,一人で眠って,一人で仕事をする.この先,何がどうなるものか分からないけれど,たとえ大地震が来ても,おそらくこの「一人」の牙城は崩れない.牙城は大げさだけど,長年の蓄積…

夏目漱石の美術世界展

ゼミの担当が終わった後,「夏目漱石の美術世界展」を観てきた.雨が降っていたので,歩きで東京藝大まで.漱石が絵画や古美術をどのような視点で見ていたか,ということをテーマに構成された展示のようだったけれど,選定した人のバイアスがどれくらいかか…

閉じ込められている

小さい頃からずっと「閉じ込められている」と思ってきたのを,ふと思い出した.表面上は同調しているようで裏ではみんな出し抜きを狙っていた学校社会とか,「やさしさ」で厚く包まれて逃げ場のなかった家だとか,どうにもならない自分自身とか,そういった…

閉じ込められている

村上龍『限りなく透明に近いブルー』を読んだ. 前読んだのが高校生のときだから,10年ぶりくらい.彼の文章は相変わらず同じメッセージを放っていた. 「お前は閉じ込められている」と.今の私にはよけいに堪える ※. 高校生のときのように従わざるを得ない…

たたかい

退屈とのたたかいは単純である. 焼き殺して灰にしてしまえばいい ※.さみしさとのたたかいは性格を異にする. 横目で見ながら,そっけなくしたり,もてなしたり. ※ リチャード・バック (村上龍 訳)『イリュージョン』 自由に生きるためには 退屈と戦う必要…

蔵書印

蔵書印をつくった. ぽんぽん捺すのが楽しい (最初だけかもしれないけれど). つくってしまった。

大きな帽子と海水浴

夢のなかでは頭より大きな帽子を被っていた. それであるとき,鏡にうつった自分を見た. そのときはじめて,その滑稽な様子に気づいた. 気づいたのは海水浴 ※ に来ているときだった. ※ しばらくぶりに,アルベール・カミュの『異邦人』を読んだせいかもし…

パンの耳

パンの耳は嫌いじゃない. むしろ好きだと言ってもいいくらい.黒田硫黄の『大日本天狗党絵詞』に, パンの耳の袋を破裂させて姿をくらます描写がある.パンの耳をせっせと食べてみたら, そういう技,身についたりしないだろうか.

夏の朝

夏の朝のことをふと思い出した ※.薄ぼんやりした外に,日中の暑さが充ちはじめていて. だいたい5時くらいで,涼しい風が吹いてたらなお良い.夏の朝は,他の時間帯や他の季節とちょっと違う. 物事の境界があいまいになるような気がして. ※ 正岡子規『病…

ほととぎす

いまは,悩む必要はない. 考えはじめると足が止まる. そんななかでの太平というか ※. そういうものを大切にしていきたい新年の,朝. ※ 参考: 夏目漱石 『一夜』

2012年の6冊

2012年に読んだうち「特に良かった本」を6冊挙げてみる. (「良かった本」は50冊くらいあった) 中島らも『永遠も半ばを過ぎて』 彼の作品を読むのはこれがはじめてだったのだけれど,そしてこれまで食わず嫌いをしていたのだけれど,のめりこんだ.人物の描…

文章の贅沢

泉鏡花の『婦系図』と『湯島の境内』を読んで,思った. 彼は,後者を描きたかったがために,前者を書いたのではないか. お蔦の,可愛さというかいじらしさというか,それを表したいがために. たったひとことを表すために,数百ページに及ぶ文章を重ねたの…