読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

よるのおわり

日々を愛でる

春の宵

夕闇が染み渡ったあとの御所と鴨川をぶらぶらしながら帰ってきた。 御所の松は大きくて、複雑な影を空に投げかけていた。雲が一面に覆いをして、でもなんだか明るくてあたたかい空だった。人は通らず、車の音もここまでは聞こえず、右手で押す自転車の車輪が…

前準備

今日は、日中の日差しがだいぶ暖かくなっていて、空気がもう少しゆるんできたら、もう春と言っても差し支えないような頃合いになってきた。久々で職場に来たから、お昼も準備していなかったし、食料のストックも何もなかったので、まあ、これはちょうど良い…

強行軍

朝早く東京に移動したのが,まだ2月の頃だった.スーツケースを持って電車で移動するのは久しぶりのような気がする.新幹線はあっという間に着いてしまい,11時には,見晴らしの良い部屋から外を眺めつつ,作業を開始する態勢ができていた.朝は雨が降ってい…

自転車に乗りながら、何かが目に入って、視界のまわりの感覚がもさもさする。 虫…?と思いつつ角を曲がると、自動販売機の光に照らされて、雪がすらすらと舞っていた。なるほど… 対向車のヘッドライトに照らされて、また、雪が見える。雪は、光があるところ…

道路1本隔てた横には冬の海が広がっており,その道路に面したホテルの裏庭には,公園が広がっていた.ホテルというよりは家という感じで,2階建てのこじんまりした,でも居心地の良いところ.部屋の窓は公園に面していて,噴水のある大きな池を芝生が取り囲…

郊外

キャンパス街の外れの,ほとんど郊外と言っても良いような場所.セントラルヒーティングで暖かい建物の,最上階の部屋で食事を摂るために,地下の共同キッチンとのあいだを行き来する.エレベータなんかはもちろんなくて,ふかふかした階段を登り降りする.…

大晦日 その1

朝早めの時間に家を出て,東京ビッグサイトへ向かう.知人の出展のお手伝い.しかしとにかく人,人,人!! 7時半過ぎの国際展示場駅,入場規制がなくなった後の会場,会場から駅までの道,いろんな人が,川が流れるように,あっちこっちに押し流されるよう…

大晦日 その2

お仕事で遅くなって19時を過ぎた通りには、普段の5分の1くらいの人通りしかなく、急いで駅に向かう。電車を乗り継いで1時間ちょっと、海のほうの街に降り立つ。 駅から友人宅まで、バスは出ているみたいだけれど、せっかくなので歩いてみる。Googleマップで…

ススキ

季節外れの台風のような強い風が吹いていて,もう少しで雨が降り出すところだった.海に面した駅に電車が止まって,山側のドアが開いて,高い石垣の壁の手前に道路があり,道路と線路を仕切るガードレールがあって,そのガードレールの下から枯れたススキが…

高瀬川

銭湯の鏡に貼ってある広告を見比べているときだった.鏡の下部分10 cmくらいのところに,帯状に貼り付けられている,あの広告.私が見比べていたのは,韓国系の教会の広告で,なぜわざわざ隣り合った鏡に同じものを貼るのだろう…?とふと疑問に思ったのだっ…

鴨川

冬とは思えないようなぬるい曇りの日,川岸を歩いて下っていった.15:05 カラスが足を水につけて,川のなかに佇んでいる…そして行水.今日は暖かいからな…15:09 白いサギが2羽,まったく同じ動作で川のなかをそろりと歩く.15:10 イヌを抱えたおばさんが跳び…

モツ

銭湯に行こうと思ったものの,案外暖かくて,まあまた今度で良いか…とそのままスーパーに向かった.冷蔵庫のなかには訳あり品の割引で買った緑色のパプリカが入っており,これをなにかと調理して,翌日のお弁当のおかずにしたい.スーパーでは,モツのパック…

ムーアの一週間

その研究所のある一帯を,私はムーア (moor) と呼ぶことにした.一週間を通いつめて,実験やら測定やらをしていた.最寄りの駅からはバスで20-30分,研究所の目の前のバス停は,終バスの時間が18時.それを逃すと,歩いて20分離れた病院 (別のバス停がある) …

密度

冬の空気は密度が高くて硬いから、アルコールくさい吐息も、上滑りする喜怒哀楽も、私のところまでは届かない。

手袋の気分

冬に,とても寒い国に行くので,その準備をする必要があった.昨年その国に行ったときには,日本で使っている薄めの手袋が,たった1枚の布でしかないことを,冷たすぎて痛くなった指とともにまざまざと気づかされた.先日,アウトドアショップで良さそうな手…

正しい11月の終わりの雨の日曜

1日中雨の予報が出ていて,自転車は端から諦めて始発で大学に向かった.秋の終わりの冷たい雨.朝はまだぬるいけれど,日中だんだん気温が下がっていく.日曜の居室にひとり.午後には気温がさらに下がり,身体が暑さに慣れてしまっていたせいか,暖房の温度…

アルコール

蒸し暑い森のなかの昼過ぎ,虫除けを顔に塗り,さて午後もがんばろうと思ったとき,揮発したエタノールの強い匂いが鼻に達した.そのとき,強いお酒を少しやりたくなった.気つけや強壮にお酒を飲むというのは,もしかしたらこういうことなのかもしれないと…

黄金

秋の落ち着かない雰囲気が好きではない.温度や光が,どこかぼんやりたそがれていて,夏や冬のような安定した空気に包まれている安心感がない.秋晴れの太陽の光も,そのあまりの疵のなさゆえに,よそよそしい気持ちになる.春は,ゆっくりだが着実に力強く…

「半」という概念がおもしろい.マレーシア語では"setengah"という言葉がそれに該当して,たとえば"jam tuju setengah"は「7時半」,"dua ringgit setengah"は「2.5リンギット」ということになる.時間やお金のという異なった単位においても,「半」という概…

ホットコーヒー

だいぶ寒くなってきた見慣れぬ街を抜けて,単線の電車に乗り込む.乗客はほとんどおらず,まあいいかと思って,朝作った,バゲットのサンドイッチを頬張る.香ばしくて硬くておいしい.しかし口の中が荒れる.大きな乗り換え駅について,次の電車まで15分ほ…

オレンジの日

敷布団が硬くてあまり寝付けなかったけれど,とにかく山小屋で目覚めた.外ではすでに焚き火がたかれていて,お湯も湧いている.ありがたい,ありがたい.川で顔を洗った後,秋の朝日が射し込む木立のなかで,コーヒーを淹れて飲んだ.なによりもこれがいち…

夜のお茶

寝る前に,お茶でも飲みながら本でも読もうかと思って,お湯を沸かす.しかし,お湯が湧くあいだに眠気がだんだん幅を効かせてきて,布団に潜り込みたくなっていく.お湯が湧いた頃には,お茶を飲んでゆったりしたい気持ちよりは,眠りたい気持ちが大きくな…

真珠

向こうの席に座っている人がカバンから何かを取り出したひょうしに、何か丸いものが床に落ちた。コロコロ転がっていったそれを見つめたその人は、拾い上げるでもなく、駅で降りていった。 あとに残されたそれは、電車の発着にあわせて前へ転がり後ろへ転がり…

月が真ん丸で煌々としていて、駅から出てきて森のなかを歩いているとき、街灯に照らされた影と、月に照らされた影と、両方とも私についてきているのがわかった。空気も比較的ぬるくて、月の光が暖かいような気になってしまう。 こんなところに場違いな印象を…

ゼリー

風邪をひいていたときに、食欲がなくなることを危惧して、カップゼリーを買っておいた。しかし、幸いにして食欲がなくなることはなく、ふたつのゼリーは冷蔵庫のなかで冷えながら夏の終りの1ヶ月を過ごしていた。 ちなみにカップゼリーはだんぜんナタデココ…

白い犬

家のなかにはたくさん動物がいて,もう真夜中なので,毛布にくるまったり,ぐしゃぐしゃと積まれた服の山に頭を突っ込んだりしている.寝ないで動き回っているものにはドウドウと睡眠をうながし,もう眠ってしまったものは起こさないように…! みんなが眠っ…

雨あがる

ここ最近あまりにも毎日雨が降ってばかりいたせいで,晴れているという状況が物珍しいように感じられてしまった.言ってみれば,普段とは逆に,雨が降っているとなんとも思わないけれど,晴れていると「おっ,今日は晴れか…」とあらためて気づくような.ここ…

墨汁

夜中,カンカン線路を叩く音が少しだけ開けた窓から漏れ聞こえて,そのせいなのか知らないけれど,眠りが浅かったような気がする.初秋の冷たい空気が,音と一緒に入り込んできていた.朝,目が覚めたら,論文の査読結果が返ってきていて,ひとまずrejectで…

魔法

早朝の街は3割増しくらいになる. ぼんやりした灯りに照らされた幻想的な路地がちらりと見えたり,暗闇のなかでどこからか銀杏やお香の匂いが漂ってきたり,ふと袋小路に迷い込んで「こんなところがあったのか…」と戸惑ったり.今朝は,折れた先の道が急に石…

9月10日

9月10日,朝早くに目が覚めてしまい,まだ暗いなかを大学へ向かった.玄関から一歩踏み出した瞬間に,この日を境にして,夜はもう秋に変わってしまったのだということを理解した.ふだん通らない道を行き,普段は見ない街の横顔を見た.

天気の変化

朝、蒸し蒸しと重たい空気を縫うように、まだ暗いうちから職場にでかけた。重たい雲が空を覆っていて、職場について少しすると、ざーざーと雨が降ってきた。 ときどき雷鳴がして、暗い赤銅色の空から湿った風が吹いてくる。朝なのにずいぶんと暗い。雨は昼前…

麦もち

ふと通りかかった和菓子屋で、「麦もち」というまんじゅうが目に入った。買ってみる。 家に帰って、おやつがわりにぱくつきながら、どうして「麦もち」なのか考える。中身はつぶあん、それを包む皮は酒饅頭の皮をもっと薄くしてハリハリとしたような感じ。よ…

水の冷たさ

もうけっこう前のことだけれど,早朝,みたらし祭に.5時半に門が開いて,一番に入っていく.早朝だけあって,人は他に数人.広々としている.早朝だけあってか,水がとにかく冷たい.もはや,冷たいというより,痛いという感じ.5分と足をつけていられなく…

夏風邪

しばらく夏風邪をひいていた.全身がだるく,節々が痛くて (手首まで痛かったのなんて初めて!),頭の血が沸騰してジュージューいっていた.しばらく寝たあとに起きあがろうとすると,体がかちかちに固まっており,這いながらトイレに行くようなありさまだっ…

会釈

言葉の通じない異国の青年男性と、心を通じあわせるとまではいかなくとも、お互いに相手のことを認識していて敵意はないことを示すときに、よく、ほとんど真顔で顎をくいっと動かす動作をされることがある。感覚的には、東南アジア圏の人に多い印象。相手か…

エンスト

こちらに戻ってきて、久々に山を走った。途中、水の減りがあまりにも早く、体温も上がってきたので、どこかで猛烈に水をかぶりたい気分になる。水…水…探しながら走る。そうして運良く蛇口をみつけて、頭から水をかぶる。ふはー、気持ちいい。ふと気づくとす…

ウミウ

ウミウが飛んでいくのを見た.海面をばたばたばたと,飛行機がとびたつときのように一直線に進んでいく.そうして,離陸して,海面すれすれをずっと遠くまで.どこまで飛んでいくのかしばらく見守ってみた.豆粒くらいの大きさになって,米粒くらいの大きさ…

猫の散歩

同じ方向に歩いている若い女の人が,首輪をつけた犬を連れている.と思ったのだけれど,犬にしてはやたらとシュッとしていて,歩き方も蛇行して頼りない.よくよく見てみると,猫である.毛並みの長い,茶色い猫.道路の反対側に,向こうから歩いてくる若い…

海の朝

海の上に浅瀬みたいなところができていて、銀マットが敷かれていて、何人かと飲み会みたいなことをした後に、その上で寝たのだった。海風が気持ちよかったような気がする。 早朝、なんとなく目が覚めて、そこは依然として海の浅瀬の上の銀マットであって、私…

替芯

シャープペンの芯が折れてしまって,かちかちノックしても新しい芯が出てこない.おや…と思って蓋を開けてみると,中の芯もぼきぼき折れて短くなってしまっている.替芯のストックは数カ月前から切れたままで,新しいものを買わなければ…と思いつつ,なんだ…

昼の夢

睡眠時間が短いと、その翌日なにもできなくなり、強力な眠気に押し倒されるようにして、昼寝をすることになってしまう。2時間ほどのあいだに脈絡のない夢がつづき、丘の街の迷路のような階段坂を駆けおりて家に帰ったり、別な大学の院生であったり、恋人と人…

ナスと油揚げ

干からびそうなナスを冷蔵庫から発見して,これで夕飯のおかずを一品増やそうということに決まった.ガレットを作ろうとして,しかし面倒で結局つくらなかった余りの油揚げが,ちょうどよく冷凍されており,半分だけ取り出してきた.短冊に切ったナスをレン…

スーパー

最初に見えたのはタコ焼きだかタイ焼きだかの屋台で、ほう、こんなところに…と目を向けたのだった。いつも通る道を、いつもより遅い時刻、家に帰っているときだった。そうして目を向けた先の、ちょっと奥に、まばゆく灯のともったスーパーがあったのだった。…

手作り市

早朝,職場に来る途中,お寺の前に車がズラッと停まっていて,ああこれはもしかしたら…と調べたところ,前から行きたいと思っていた手作り市であった.8時からやっているそう.ベーグルのお店なんかもあるのね,ふむふむ.そうしていそいそとでかけていって…

朝の音

朝に聞こえる音,というものには,場所によって個性がある.以前,博物館にいたときには,近くの警察署で剣道だか柔道だかの朝稽古をする声が聞こえてきた.前を通りかかって,最上階がワンフロアまるごと道場みたいになっているのを見て,それと知った.そ…

水増しラタトゥイユ

悲しい気分なのでラタトゥイユを作ることにした。 ラタトゥイユにおいて、ズッキーニやパプリカはスターである。スーパーにそんなに置いておらず、お値段も高め、しかしめっぽうおいしい。これらなしではラタトゥイユは成立しない。 大きくておいしそうなズ…

賀茂茄子の錬金術

茄子の季節がやってきた。そして折よくスーパーに値下げ品の大きな賀茂茄子をみつける。ソフトボールよりも大きい!もちろん迷いなく購入である。 2 cmくらいの厚さに切って、表面に、パジルペーストの上澄みのオリーブオイルを塗る。バジルペーストは、昨日…

春雨サラダ (エスニック)

夕ごはんがなんだか物足りないにもかかわらず,すでにめぼしい食材は冷蔵庫にない.どうするか…?そう考えて台所を見回したとき,先週買い置いた春雨が目に入った.そうだ,春雨サラダにしよう,エスニックなやつ.そしてそのためにはピーナッツがあるとうれ…

ミル

粒胡椒を挽くとき、ミルを持つ手のひらが熱くなるような気がする。摩擦熱で本当にミルが熱くなっているのか、私の手のひらが熱を帯びるだけなのか、よくわからない。

不可侵

膀胱がいっぱいになって、ふと目が覚めて、やれやれと半分眠ったまま起き出すとき、わずかに雨が降っているようで、ときたまポツンと音が耳に届いて、しかし外を確かめることはせずに、廊下の時計の文字盤は真っ暗で見えず、スマートフォンの電源も入らない…