よるのおわり

日々を愛でる

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POLO

POLOというお菓子があった.スースーするやつで,たしかドーナツみたいな真ん中に穴の空いた白いタブレットに,大文字でPOLO・POLO・POLOと繰り返し書いてあった気がする.青だか緑だかの紙に巻かれた銀紙に,きれいに並んで包まれていた.このお菓子と分か…

やすり

アンプルに入った試薬を使った.試薬の箱を開けると,つるんとしたガラスで封入された瓶がでてきて,どうやって開けるのか,見当がつかなかった.というよりそもそも,哺乳瓶のような形をしたこの瓶がなんという名前なのかもわからなかった.ガラス切りで頭…

古着の匂い

高校生の頃,古着屋に足繁く通っていた.ラックにずらっと吊るされたTシャツからは,消臭剤とクレヨンを足したような,ケミカルっぽい独特の匂いがする.どの店に行ってもこの匂いは共通で,これを嗅ぐと「ああ古着屋に来たな」と思う.この匂い,でも,どこ…

サイコロ入れ

サイコロを入れる箱として認識しているプラスチックの容器があった.手の平におさまるくらいのサイズで,側面のいちばん小さい1面の抜けた,平べったい長方形の入れ物がふたつ,向かいどうしの入れ子状にかみ合うようになっている.たしか,年上のいとこの暮…

砥石

ひとりになりたい気持ちにふっと襲われて,めったに食べないカップ麺を,博物館の外の隅っこのほうですすってみたのが昼のことだった.賞味期限が1年前に切れていたし,お湯がなかなか沸かなくて,なんだかあんまり慰めにはならなかった.敷地外の高層マンシ…

いたずらがきが間を埋める

いたずらがきっていうと,どうして絵が思い出されるのか考えていて,いや文章でも良いではないか,ふんふんと鼻歌でも歌いながら,そこにあった紙の端っことか,Webの折り重なった奥のほうとか,そういうところになんとなく文字を連ねていくのも素敵だなって…

運だよね

なにかがうまくいってたとして,でも,それって結局は運みたいなものだよね,ってことを考えている.たしかに努力し続けたのかもしれないし,苦しいことがたくさんあってもやめなかったのかもしれない.だからといって努力が必ず成果に結びつくわけではない…

近況

アカデミックハイ+熱帯夜の寝不足で人や物や時間が平板に見えているだけでなく,研究と生活におけるハレ的イベントが重なって,ここ1--2週間,時間が驚くほど加速度的に滑り去っている.昼寝で寝過ごしてぼやけた頭を抱えてTWSに行ったり,ビザを取りに3日連…

正しく6月の匂いがする日曜日

自転車で行くのはあきらめて,徒歩で. 雨のマークが午後まで延長していたので. 正しく 6月の 匂いがする 日曜日 おまけ

もっとも濃くてずるい青

風の強い日で,夕暮れの帰り道に尾竹橋を通ったときだった.いろんなことが思ったとおりにいかないんだなという失望感に,ちょっとした希望が加わって (でもその希望だってしょせん極大値でしかないんだろうとかえってやさぐれた気持ちで),ペダルを回してい…

不機嫌

まるでいま気づいたかのように当惑の色を見せて. こんな自分がここにいることが誰かのせいであるような. でも決して私を責めるわけではないふりをして.どうすればよかったのですか? さっきまで笑っていたあなたと向かいあっている私は.

煩悶

言葉が感情に飲み込まれていく。 鉤縄のように投げた言葉にも回り込まれて。 こんなことを書き散らすのが精一杯。

おだやかならざる

好きなものも嫌いなものもたくさんあって. それらに出逢うたびに,揺さぶられる.おだやかな目で外を眺め,力強く漂えたらと思うのに. 心配になったり怒ったりさみしくなったり後悔したりして. そうして,揺れて,心の遊びが埋められていく.しかし,そう…

たたかい

退屈とのたたかいは単純である. 焼き殺して灰にしてしまえばいい ※.さみしさとのたたかいは性格を異にする. 横目で見ながら,そっけなくしたり,もてなしたり. ※ リチャード・バック (村上龍 訳)『イリュージョン』 自由に生きるためには 退屈と戦う必要…

歯が欠けた話

歯が欠けて,古風な歯医者に行って,大笑いしたくなる話.歯を磨いていたら,左上の第二大臼歯が欠けた.5 mm角ほどの破片の内側に,象牙質みたいなものが見えている.あわてて大学周辺の歯科に電話をかけて,2軒目で空きを当てた.その歯科医院は,見た目に…

不足

あなたに話したいことの半分も話せず. 話せたうちの半分も伝わったか定かでなく. 不自由な時間と臆病な自分にため息をつきながら.でも,それくらいがちょうどよいのかなと思ったりする.

カカオの収穫

科博の『チョコレート展』で,カカオの実の収穫を撮影した動画を観た.まず,幹から直接,実が生えている. それを,湯の花を掻き取るような棒で落としていた ※. 軽く,乾いたカカオの実は,ストンと地面に落ちる. それをナタでスカスカ割って,種を取り出…

謎かけ

謎をかけたら新たな謎かけが返ってきて。 冷蔵庫の振動音が染み入る眠れない夜。

笑い転げる

死にそうなくらい笑い転げられるのは子供の特権なのだろうか.小さい頃,きょうだいと一緒に,よく,笑い遊び転げていた. それこそ息がつまって窒息死しそうなくらい. なにがそんなにおもしろかったのかは,おぼえていないけれど.大きくなって,そういう…

追いかけっこ

追いすがってくる言葉から全力で逃げる. それらはもはや自分の言葉には思えない. けれども彼らだって本気なのだった. 私は逃げながら新たな言葉をまき散らす. それらもいつか追いすがってくることだろう. たぶん一生つづく,追いかけっこ.

あめあがり

願わくば,雨は,夜中にやんでほしい. 昼間に雨があがると,落ち着かなくなってしまうから. 濡れた地面や樹や建物が,ぼんやりした太陽を浴びるのを見ていると. 何をするでもないのに,外に出て,そこらを歩きまわりたくなる. 昼間の雨あがりは,ちょっ…

逃げる

逃げればよろしい. あるいは,逃げたことにしてしまえば良い. 面と向かってぶつかっていくべきものなんて,そんなに多くない. ぶつかっていった時点で,実はすでに負けている. その枠組みのなかで闘うことに決まってしまったわけだから. 勝ちたくも負け…

好意

基本的に,好意というのは本当にありがたいものだと思う. しかし,それは同時に,怖いものでもあると思ってしまう. 好意に応えられず相手を失望させてしまうのが怖いのか. それとも,好意が途絶えたあとを想像して怖くなるのか. そして,好意は,受ける…

間の長いやりとり

間の長いやりとりはちょっと楽しい. 急ぐでもなく,何を決めるでもなく. 相手への返事をゆっくり考えて,相手からの返事をゆっくり待つ. そこには,なんとなく暗黙の了解があるような気がして. しかし,それを確かめると心地良さが終わってしまう気もし…

ドッジボール

小学生の頃,ドッジボールが流行っていた. 強い球を受け止め,また強く投げ返すのが当時の花形であった. しかし私は逃げるのが専門だった. 最後のひとりになっても決して当たらない. たまにしくじることもあったけれど. コートと人の空間配置を認識して…

はじめての雨

雨というのも,考えてみれば不思議なもので. だって,空から水が落ちてくるのですよ. 雨の日は,音や匂いがよく感じられるようになる気がする. 気分がしっとりして,世界がちょっと違って見える. この世に生まれて最初に雨を見たとき,何を思うのだろう…

書庫

総合図書館の書庫が大好きだ. まるでアリになったような気分がする. 本でできた巣の中を,せっせと働きまわるような. 私がここでうろつきまわっていることは,開架にいる人々にもわからないのだ. 地上からはアリの巣の内部が見えないみたいに.

口笛

口笛を吹けたらいいなと,小学生の頃から思ってきた. 友人や家族が吹いているのを見て (聞いて?),素敵に思っていた. オトナになったらきっと吹けるようになると期待していた. それでも,この歳になっても,いまだに口笛を吹くことができない. 日頃ほと…

自転車欲

今日みたいによく晴れた日は,自転車に乗るか否かで迷うことになる. これを「自転車欲」と,今ここで名づけたい. 問題なのは,その自転車欲が突如としてあらわれること. 数日前からわかっていれば,そのように心構えができる. しかし突然あらわれた自転…