とある敬愛する先輩との別れ際に,ツヨクイキロ と言葉をもらったことがある.
実際,その時期,私は強く生き,心をすり減らしながらもそれ以上のものを得た.
その頃,強く生きるとはどういうことなのか,わかっていたような気がしていた.
しかし,振り返ってみて,今は,その確信は間違っていたと思う.
頭で思っていた強さと,体現した強さが,実は異なっていた.
この,強く生きた時期,私は実際もっとも弱かった.
はじめは,弱さを認めるだけの強さを持ちあわせていなかった.
しかし,弱さと向き合い,弱さを受け入れた後,すべてが変わった.
私は弱い,このたったひとことを理解することが,おそらく,強さである.
弱さを認めない者を,誰が本気で気にかけてくれるだろうか.
弱さを認めない者が,人の忠告や助言に心から耳を傾けられるだろうか.
弱さの深淵から目をそむける者が,どうして広い世界の全体を見渡せるだろうか.
思うに,もっとも怖いものは,怖いと知覚できないものだ.
つまり,弱さを弱さと認識できない弱さだ.
それは,じわじわと強さをむしばむ.それに気づくのは難しい.