よるのおわり

日々を愛でる

ひとり

どこかで,基本は「一人」であると考えている.一人で食べて,一人で考えて,一人で眠って,一人で仕事をする.この先,何がどうなるものか分からないけれど,たとえ大地震が来ても,おそらくこの「一人」の牙城は崩れない.牙城は大げさだけど,長年の蓄積で取り返しがつかぬほど頑なになってビクともしない.
要は好きなのだ.歳をとってみたところで自己診断をしてみれば,他人とのコミュニケーションが苦手とかそういうことではなく---若いときは,そうに違いないとそれなりに思い悩んだが---要は一人が好きなのだ.ただそれだけのことである.そうして一人の気楽さに拘泥するうち,誰かにもたれかかったり,誰かを受けとめたりする喜びを逸してしまった.
吉田篤弘 『小さな男*静かな声』