よるのおわり

日々を愛でる

観覧車

デジャヴともノスタルジーともちょっと違う,ほっとしながら怖い夢を見るような不思議な感覚を呼びおこされるものが私にはあって,そのひとつが,観覧車だ.観覧車に出会うと,はっと,その周りの空間が奇妙なものに,なんだかねじれているようなものに錯覚されはじめて,理性がすぐにそうした錯覚を止めにかかる.

真っ青な夏の空にファンシーな音楽とともにまわる東山動物園の観覧車,実物は知らないけれど想像をたっぷりに補完した『もの食う人びと』のウィーンの観覧車,本郷三丁目の交差点や夜の散歩で不意に現れる後楽園の観覧車….私の知っている観覧車なんて,世の中のすべての観覧車に比べたら,まったくものの数ではないだろうな.

今朝,私は東海道新幹線の通路側の自由席に座っていて,窓側の人が席を立った数分間,なんともなしに外を眺めていた.1/3ほど閉められたブラインドと,その下に置かれたペットボトルを,冬の昼のはじまりのやわらかい日差しが照らしていて,ああきれいな光だなとそんなことを考えていた.そのときふっと視界にあらわれ,数秒のうちに流れていったのが,観覧車だった.そういえば,沿線には,いくつかそうした観覧車があったような気がする.そのうちのひとつが,私に,ここにこうした文章を書かせることになった.

そして,観覧車は英語でFerris wheelと言うそうな.音の響きが,観覧車に抱く印象とぴったり重なり,私はこの名称を一目見て気に入った.



このことを知ったのは,昨年2月14日のGoogle Doodleでだった.私はこのDoodleもけっこう好きだ.(クマとタコの組み合わせなんて誰が考えつくだろう!)