よるのおわり

日々を愛でる

犬歯

私の上顎右犬歯はほかの歯に比べて咬耗している.半年くらい前に歯の解剖学を勉強していて,自分の歯はどうなんだろうって注目を向けたときに,はじめてそのことに気づいた.

体の使い方にも習慣や癖みたいなものがあって,それが個人のフィジカルな特徴としてゆっくりゆっくり記録されていく.いつ頃からなぜ磨り減っていったのかはわからないけれど,私の犬歯はたしかに咬耗しつづけており,歯の解剖学を学ぶまではそのことに気づきもせず,意識も向けなかった

まぎれもない私の特性が,私の体に記録されつづけているのに,私の意識はそのことを認識しなかった.このことを考えるたび,「わたし」という存在の輪郭が,なんだかとても大きくぼんやりしたもののように思われる.



そもそも,口の中にどんな形の歯が何本あるかすら明確には意識しなかった.