よるのおわり

日々を愛でる

魔法

早朝の街は3割増しくらいになる.
ぼんやりした灯りに照らされた幻想的な路地がちらりと見えたり,暗闇のなかでどこからか銀杏やお香の匂いが漂ってきたり,ふと袋小路に迷い込んで「こんなところがあったのか…」と戸惑ったり.

今朝は,折れた先の道が急に石畳に変わり,街灯もなくなって,すっと冷たい空気が漂ってきたように思った.暗くてよくわからないけれど先は行き止まりのようにも見える.
それでも進んでいくと,大勢の人が唱える低いお経の声が聞こえてきて,ここはお寺の境内に通じる道なのだなと理解した.それがわかるとなんだか心強くて,また,自動点灯した電灯にも励まされる.閉じられた小さな山門に行き当たって引き返してきた.

朝日がのぼると,そうしたいろいろはすでにすうっと溶けている.