よるのおわり

日々を愛でる

真珠

向こうの席に座っている人がカバンから何かを取り出したひょうしに、何か丸いものが床に落ちた。コロコロ転がっていったそれを見つめたその人は、拾い上げるでもなく、駅で降りていった。

あとに残されたそれは、電車の発着にあわせて前へ転がり後ろへ転がり、車両の端から端まで行ったり来たり。新しく電車に乗ってきた人は、えっ!?という感じでそれに目をやる。

私のところに来たときによく見てみると、それは模造の真珠だった。秋の陽に輝いていてくれたら完璧だなと思ったものの、これは地下鉄で、真珠は相変わらず眠たげな人びとのあいだを勢いよく動き回っている。