よるのおわり

日々を愛でる

ヘルシンキのサウナ

ヘルシンキに滞在している友人とともに,モダンなサウナに行く.
中心部から外れた海辺にあり,最寄りのトラムの停留所からさらに歩いて10分くらい.ちょうどよく雪なんかも降ってきて,寒くなってくる.絶好のサウナ日和ではないか…

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中に入るとおしゃれなレストランが広がっていて,暖かい.サウナは左手の奥のほうとのこと.コートを脱いでしばし待つ.前のスロットのお客さんたちが出ていった後,更衣室で水着に着替え,シャワーを浴びて,いざサウナへ.

サウナ自体はふた部屋あるらしく,一方はスモーク,もう一方はストーブとのこと.友人によると,スモークサウナのほうは,最初に薪を燃やした煙を室内に充満させて,時間を置いた後に人が入る形式とのこと.こちらのほうが煙の香ばしい匂いがするのかもしれない.

最初にスモークのほうに入ると,内部はほぼ真っ暗で水蒸気がもうもうとしており,そしてなにより熱い.水蒸気が肌にべったりと貼りついて,動くと皮膚がひりひりするし,鼻や耳などの末端がびりびりしびれて焼けていくような感覚がある.本場のサウナってこんなに熱いものなのか…! と思いながら数分がまんするも,限界に達して外に出る.私以外誰も入っていなかった.

ストーブのほうに入ると,こちらは壁のひとつが窓ガラスになっていて,外の灯りが入ってくる.温度も充分がまんできる程度で,人もたくさん腰かけている.先にこちらに入っていた友人としばしおしゃべりし,その後ふたつのサウナの中間にあるシャワー室でRと合流する.サウナのほかにも,暖炉を備えた談話室やバーカウンターがあって,お酒を飲んだりくつろいだりしながら楽しめるようになっている.(もちろん無料の飲水コーナーもあった).

スモークのほうに再挑戦すると,今度は全然熱くないし,水蒸気も多くはない.人の数もかなり増えている.しばらく座って観察していると,

  1. 熱源の蓋を開けると温度が上がる
  2. 熱源に水を注ぎ込んで水蒸気を発生させると体感温度が急増する

という法則に気づいた.最初に入ったときには,おそらく,蓋が開けっ放しになっていて,水がたくさん追加された後だったのだろう.あまりに熱すぎて,ほかのお客さんも逃げていたに違いない.


海に面したデッキ状になっているベランダに出ることもできる.雪はあいかわらず降りつづいている.そしておもしろいことに,海に飛び込むこともできるのだった.デッキの先端にははしごがついていて,暗い夜の海に浸かって,また帰ってくることができる.

サウナで充分に体を温めて,海に飛び込む.一瞬で体が冷えて,足の爪先の感覚なんかなくなってしまうくらい,海水は冷たい.震えながら室内に帰り,サウナに入って,ほっとするのだった.血管が急に縮まったためか,一度は頭がくらくらしてしまった.

友人によると,このあたりはデンマークの島々によって海水がせき止められ,淡水が優勢になるので,塩分濃度が低いのだそうな.塩分濃度が高い海はなかなか凍らず,もっと水温が下がって氷点下になることもあるという.おそろしい….今でも,暗い冬の海の冷たさと,波の強さと,このはしごを手放したらそのまま流されていってしまうのではないかという恐怖を思いせる.


ほかのお客さんと会話したり,置いてあったサウナ専門誌を読みながら暖炉のスペースで休憩したり,友人はビールを飲んだりしながら,予約していた2時間をあっというまに過ごした.こういうサウナが今住んでいる家にあったらいいのにな…などと思う.そして,次にフィンランドに行くときには,もっと伝統的なサウナも体験してみるのだ.