よるのおわり

日々を愛でる

朝のイデア

ビルの建築はだいぶ進行しており、4階の窓より高くなっている。1ヶ月前にはその向こうにかろうじて荒野が見えていたけれど、今はビルが邪魔してもはや見えなくなっている。

ビルのいちばん上の階で作業をしている人が、弱い朝日を受けている。あの場所からはきっと荒野が見渡せるだろう。風の強い寒い朝で、なにかよくわからない機材に巻かれたビニールがはためき、もっと上空のクレーンに吊るされた鎖と、それにつながったゴムが、ぐるんぐるんと震えている。

これを見たとき、朝の良さが凝縮された光景だと思った。願わくばそのまま時間が止まり、1日の始まりだとか昼だとか、そういうものに汚されなければ良い。

…建物を出たときには、冬の朝の、おだやかでキリッとした匂いがした。

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