よるのおわり

日々を愛でる

極東

極東の大学でシンポジウムがあり、参加してきた。東京はもう初夏の雰囲気だけれど、こちらはまだ冬の気候で、晴れ渡っていても風が冷たく、気温も低い。夜は冷え込む。しかし最後の2日間はTシャツ一枚で過ごせそうな暑い陽気。どうなっているのだろう。

ときどき花が咲いているのも見るけれど、林の木々のほとんどはまっさらに葉が落ちていて、山肌は茶色く枝ばっている。晴れた日、移動する車の中で、山腹の林の中一面にキラキラなにかが光っているのが見えて、不思議に思っていた。
もっと山の近くを走ったとき、それはお墓であることがわかった。山腹一面に木々が生えており、その下にびっしりとお墓がつづいている。夏になって木々が一斉に、まぶしい緑の葉をつけたら、とてもすてきな光景だろうなと思う。

まだ寒かった街では、手袋をつけていた。カフェで休憩しているときに、ふと気づくと、その手袋がどこにもない。おそらく、両替所に忘れてきたのだろう…。ブリヌイを少しだけ急いで食べ終わり、急いで道を戻る。
両替所に入り、さっき入っていた個室の扉を開け、英語はたいてい通じないので、窓口の女性に身振りを交えながら質問する。警備の人がぬっと顔を出し、不審者と間違えられたかな…と思っていると、彼は警備室に引っ込み、手袋を出してきてくれる。良かった良かった。お礼を尽くして立ち去る。

博物館では、動物・植物部門の女性のおばさんが展示解説をしてくださる。ロシア語でばばばっと、言葉が次から次へと。当然わからないのだけれど、ふむふむという顔をしてうなずく。英語を使ってくれそうな気配はまったくない (同行してくれた考古学の研究者は苦笑いをしていた) けれど、ときどき生物の名前が出てきて、英語からそのまま単語が使われていたりして、これならわかるぞ、というものがある。
途中、鳥の剥製を指して、「チャイカ」と彼女は言う。「チャイカ」と私も繰り返す。チェーホフを読んだから、知っているのだ。ホルマリンの匂いが漂う展示室をひととおり巡って、お礼を述べて、出てきた。出てきたあと、彼女が追いついてきて、何か言う。どうやら、ノートに感想を書いてほしいとのこと。差し出されたノートに、感想と名前を記して、考古学研究室のオフィスへ戻る。

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