よるのおわり

日々を愛でる

イカの納品

カフェの2階でお仕事をしていると、向かいのビルの前に小さなトラックが停まる。荷台の上に、キャップをかぶった人がひとり上がる。荷台はのっぺりした長方形で、上面に丸い蓋がついている。様子を見ていると、どうやら魚を行きたまま運搬するトラックのようだ。丸い蓋からのぞくタンクの内部には水が詰まっていて、おそらく酸素を供給するためか、しゃわしゃわと泡立っている。

荷台に上がった男の人は、はじめに、魚屋でよく見かける白いバケツに、タンクから海水を汲み、荷台の下にいる別な人に手渡す。これをもう一度くり返す。海水はいいから早く魚を……と気がはやる。

次に、キャップの男の人は、バスケットをひとつずつ手に持つ。どこにでもあるような、100均で買えるような、水色のプラスチックの、浅いバスケット。これをタンクのなかに入れて、魚を取り出す。魚は、タンクの口のところに集められているのだろうか。バスケットを入れて、向こうの方からこちらに集めてきて、そのまま、よっと取り出すと、バスケットの上にぴちぴちと跳ねているのは、たくさんのイカである。

これを手早くひとつのバスケットにまとめて、傍に置いてあったはかりで重さを測り、下にいた人に手渡す。下にいた人は、なにやかやをして (2階から見ているので、トラックの荷台の上の出来事はばっちり見えるのだけれど、トラックの下でおこっている出来事は見えない)、台車を押して店のなかに入っていく。

店のなかに入っていった人が数分後に出てくるのを待ったあと、キャップの男の人はもう一度同じことを繰り返してイカを納品し、そうして納品は終わったみたいで、蓋をしめ、はかりやバスケットをそばに置いて、男の人は荷台を降りて、トラックの運転席に入り、トラックは行ってしまった。