よるのおわり

日々を愛でる

灯台の話

11月1日は灯台の日だということらしい。最近 (といってもここ数年だけれど)、灯台が登場する小説をよく読んでいる。そしていずれもおもしろい。せっかくなので紹介してみることにしようかな。

ヴァージニア・ウルフ灯台へ
静かな静かな物語。人の心理や会話の描写が流れるように移り変わって、山場もない代わりに、気づけば物語の中の時も静かに流れ去っていて。前半と後半の移り変わりの時間が一気に流れるときを、別荘での夜会の後にみんなが寝静まる場面から始めて、屋敷の中を流れる隙間風のようにさらさらと書き出しているところ、すごいと思った。

"We perish, each alone"

ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』
静かな孤独が、悲しみや喜びのなかに淡々と流れるさま。響き合う人と人の生き様。バベル・ダークは私の中に生きていて、その存在感が、読んでいる私の肝を冷やし、心臓をきゅっと縮み上がらせた。悲しいまでのスコットランド?の冷たい寂寞感の描写。その中に浮かび上がる灯台と、闇のなかでの暖かな生活。それと「語る者」が転換する場面。ここは鳥肌が立つ。

「ねえ、お話して、シルバー」


アリステア・マクラウド『冬の犬』の「島」
人びとの口を通じて伝えられていく真実とも噂ともつかないお話。世代を超えて灯台を守ってきた一族の最後の娘の、不思議な恋物語

「どこに住んでても、寂しい人間は寂しいもんだよな」

ガブリエル・ガルシア=マルケス『族長の秋』
老獪だが鈍感で、性欲の強い愛に飢えた老人である醜い大統領に、人間的なおかしさと愛嬌を感じてしまうのはなぜだろう。そしてそのまわりを取り巻く印象的な人びととできごと! 大統領府のブラインドの隙間から緑色の灯台の灯が定期的に入り込んで、大統領の不安を緑色に染め上げる。

諸君、腹いっぱい食ってくれ。

最近は静かな小説が好き。