よるのおわり

日々を愛でる

遠い電話

居住許可のことで北の国に国際電話をかける。ウェブフォームの問い合わせからは待てど暮らせど返事が来ず、いろいろなスケジュールが差し迫ってきたので強硬手段に出た。

英語のアナウンスが数字のボタンを押すように言うけれど、肝心の数字の部分が聞き取れない。Rにセカンドオピニオンを頼み、それが9 (nine) であることを認識する。電話は混み合っており、あなたは28番だと自動音声は言う。こういう電話にありがちな待ち音声がひとしきり聞こえ、定期的に「電話は混み合っており…」のアナウンスが入る。しばらく待ってからまた受話器に耳をつけると、数字は26に減っている。次は24。だいたい5分ごとに耳をつけているので、あと1時間以上かかる計算か。

あちらは朝でもこちらは夕方で、Lを迎えに行ったりせねばならない。そうしているあいだに、大学に用意してもらう書類に関してあまり芳しくないメールが来たりする。

シェアしている自室では電話をしづらいので、湿っぽい会議室の中で電話をかけている。この閉じられた空間のなかで、なかなかつながらない国際電話をかけながら、あれもこれも後手後手に回っていることを認識し、このCOVID-19でその手間が何倍にも増えていること、しかしCOVID-19のことがなければこの機会もつかめなかったかもしれないことを思う。

ざらざらとした無機質な国際電話の音声が小さく聞こえている夕方、その圧倒的な遠さに重くのしかかられながら、本当に北の国に行けるのだろうかと心配にすらなってくる。7番まできたものの、もうこれ以上は留まっていられなかったため、電話を切って部屋を後にした。