よるのおわり

日々を愛でる

朝の代替バス

朝から会議があったため、早起きしてすぐに大学へ向かう。日が長くなったとはいえこの時間はまだ真っ暗で、春の夜の匂いがすこしだけする。この匂いをかぐのも久しぶりだ…と思いながら最寄駅につくと、駅の階段が閉鎖されていて電車に乗れない。立て看板を見ると、どうやら代替バスが走っているらしい。たしかに、バス停前に待っている人が数人いる。
数分するとバスが来て、みんな乗り込む。こんなに朝早いのに、人はいるものだなあとびっくりする。電車だと車両に広く散らばって目立たないけれど、バスだと凝縮されて多く感じるのかもしれない。バスの中は暗くて、モニターにニュースが繰り返し映されている。ウクライナの話題ばかりのよう。
車窓からは外が見える。電車は途中から地下に入ってしまうし、高架の上を走るので、こんなに地上近くを間近に見ることはできない。たまに窓の外に目をやっては、今どこを走っているだろうか…と考える。思ったより時間がかかりそうだけれど、そこまで時間にシビアな会議ではないので大丈夫。
通路に立って前を睨んでいたおばさんが、こちらに注意を向けているような気がして身構える。すると、「ごめんなさい、○○駅はもう通り過ぎちゃった?」ということを聞かれる。すでに通り過ぎていたのでそう答えたけれど、考えてみると、その駅のところでバスは止まらなかった気がする。次の駅でおばさんは降りていく。運転手さんが止まるのを忘れているのでは?という疑念を確かめるべく見張っていると、降りたそうにしている人がいたにも関わらず、私の降りる駅のひとつ前もとばしていた。
大学の駅で降りて、人通りのほとんどない、まだ暗い街を歩いていくと、いつもはまったく聞こえない鳥の声がした。建物の屋上から響いているようだった。春の朝だ、という感触を強くした。

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