よるのおわり

日々を愛でる

遠い電話

居住許可のことで北の国に国際電話をかける。ウェブフォームの問い合わせからは待てど暮らせど返事が来ず、いろいろなスケジュールが差し迫ってきたので強硬手段に出た。

英語のアナウンスが数字のボタンを押すように言うけれど、肝心の数字の部分が聞き取れない。Rにセカンドオピニオンを頼み、それが9 (nine) であることを認識する。電話は混み合っており、あなたは28番だと自動音声は言う。こういう電話にありがちな待ち音声がひとしきり聞こえ、定期的に「電話は混み合っており…」のアナウンスが入る。しばらく待ってからまた受話器に耳をつけると、数字は26に減っている。次は24。だいたい5分ごとに耳をつけているので、あと1時間以上かかる計算か。

あちらは朝でもこちらは夕方で、Lを迎えに行ったりせねばならない。そうしているあいだに、大学に用意してもらう書類に関してあまり芳しくないメールが来たりする。

シェアしている自室では電話をしづらいので、湿っぽい会議室の中で電話をかけている。この閉じられた空間のなかで、なかなかつながらない国際電話をかけながら、あれもこれも後手後手に回っていることを認識し、このCOVID-19でその手間が何倍にも増えていること、しかしCOVID-19のことがなければこの機会もつかめなかったかもしれないことを思う。

ざらざらとした無機質な国際電話の音声が小さく聞こえている夕方、その圧倒的な遠さに重くのしかかられながら、本当に北の国に行けるのだろうかと心配にすらなってくる。7番まできたものの、もうこれ以上は留まっていられなかったため、電話を切って部屋を後にした。

夜の散歩

夕暮れの街をさまよっていたら、公園のなかに大きな池が現れた。金網で囲われており、野鳥の生息地になっているらしく、観察所があった。そのすぐ脇にはオートロックで全体的に背の低い高級そうなマンションがあった。その後、現実感の麻痺しそうな丘陵地の住宅地を登り、こちらもまた金網で囲われた広大な森を左手に見ながら道路を進むと、寂れた官舎が現れ、道は立ち入ることのできないあやしげな森に囲まれるかたちで行き止まりになっていた。お腹が空いたのをこらえながらもときた道をもどり、なぜだか急に焼いたイカを食べたくなりながら、家に着くともうだいぶ遅い時刻になっていた。

……後で調べたところ、このあやしげな森は本当にあやしげなところであり、迂闊に立ち入ると行方不明になりかねないところであることを知った。いやはや。

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春の桜

最近あまり文章を書けないフェーズに入っている。どういう種類の余裕かはわからないけれど、余裕がないのかも。お仕事のほうもちょっとスランプ気味。でもこういうスランプのときにも低空飛行で仕事をつづけるスキルみたいなものは、昔に比べて向上していると思う。ちょっとずつ、ちょっとずつ。

春休みに入って小学生も中学生もいなくなり、朝の川沿いの道は驚くほどの静けさに包まれている。桜がほあーっと咲いていて、川面には散った花びらが途切れることなく流れている。空は春っぽい明るい曇り空。そういう周りの状況も、静けさを感じさせる要因になっているんじゃないだろうか。

桜の花はきれいだと思うけれど、日本人のDNAだとかなんとか言ってことさら特別視するのは気持ち悪いと思うし、桜だというだけでは、写真を撮る気にもあんまりならない。どことなく浅ましい感じがする。私が桜の花を好きなのだとしたら、それは、そこに静寂があるからだと思う。気温が上がり、身体と空気との境界が緩み始めた春に、うすぼんやりした桜の花がほわほわとそこにあるのを見ると、シンとした気分になる。

春に半分足を突っ込んでいる

季節がだんだんやさしいほうに動いていっていると感じる。
ああ冬だなあと思ったのは12月くらいで、それは、寒さのせいではなく、日照時間が短くなったためにそう思ったのだという気がする。あの頃は帰るときに自転車の灯りをつけていて、とっぷり暮れたなかをお迎えに行っていたけれど、今はもうまったくそうした機会がない。あっちこっち行ったり来たりしているから実感がなかったけれど、関東で冬を過ごすのは実は5年ぶり?なのだった。
春は、あの、泣きたくなるような夜/早朝の匂いと薄明かりが大好きだ。深夜、ふらりと気軽に家を出て周りをぶらぶらしてくるような自由はもうなくなってしまったけれど、早朝目が覚めて、玄関のドアをすこしだけ開けて空の色を確認するときに、その匂いを嗅ぐことができればそれで満足かもしれないとも思う。
下がっていた気温が一段階上がって、週末ごとに雨が降るようになってきた。雨の予報になっていた日曜、早く目が覚めてしまって、そろりそろりと起き出し、玄関のドアを開けると、大好きな空の色に濃厚な土の匂いがした。もうすぐに雨が降り始めるだろうということはよくわかった。
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廃車と電動ミル

焦燥感があって最近あんまり文章が書けない。ので、箇条書きで最近のできごとを、と思ったけれど、書き始めたら意外と書けるものだ。

 

南の島から乗ってきた車にいろいろがたが来て廃車となった。故障したところを直して少ししたらまた止まり、直しても直しても次々出てくるかもということと、車検がすぐに控えていたことと、今年の終わりくらいまでには廃車にせねばということになっていたので。大雨の翌日の暖かい日に散歩を兼ねて修理工場に行き、中に入っていたいろいろを回収。走行距離を写真に撮ろうと思っていたのを忘れた。書類を見ると、平成21年には静岡にいたようで、そのあと南の島に来て、中古車として私たちの手に渡ってきたのだ。ぶつけたりしてへこんでいたけれど(ちなみにそのうちひとつは北の国に旅立つ直前の怒涛の日々の早朝、もうひとつは首里の小さい道でバックしたときに電柱に当てたのだったのを覚えている)、わりと愛着があったなあと思う。これに乗っていろいろなところに行った。

その日の午後は気になっていたハンバーガー屋さんへ。テイクアウトし、スーパーでビールを買い、途中の公園でピクニック。不良な感じの親子である。

 

ダウナーな気分に任せて電動ミルを購入してしまった。家で毎回ドリップバッグのコーヒーを飲んでいるのはひょっとしてエコではないのでは?と思ったのもあって。コーヒー体験がレベルアップし、今のところは高い買い物をして良かったと思っている。