よるのおわり

日々を愛でる

2016-01-01から1年間の記事一覧

ススキ

季節外れの台風のような強い風が吹いていて,もう少しで雨が降り出すところだった.海に面した駅に電車が止まって,山側のドアが開いて,高い石垣の壁の手前に道路があり,道路と線路を仕切るガードレールがあって,そのガードレールの下から枯れたススキが…

高瀬川

銭湯の鏡に貼ってある広告を見比べているときだった.鏡の下部分10 cmくらいのところに,帯状に貼り付けられている,あの広告.私が見比べていたのは,韓国系の教会の広告で,なぜわざわざ隣り合った鏡に同じものを貼るのだろう…?とふと疑問に思ったのだっ…

おさる

突然「チンパンジーがネギ好きなんだ」と恋人からメッセージが来る.動物園で観察していた限りでは,タマネギは好きそうだったけど,ネギは食べているのを見たことがない.…ネギを食べさせちゃいけないペット動物もいたような…イヌだっけ.そしてそんなこと…

鴨川

冬とは思えないようなぬるい曇りの日,川岸を歩いて下っていった.15:05 カラスが足を水につけて,川のなかに佇んでいる…そして行水.今日は暖かいからな…15:09 白いサギが2羽,まったく同じ動作で川のなかをそろりと歩く.15:10 イヌを抱えたおばさんが跳び…

モツ

銭湯に行こうと思ったものの,案外暖かくて,まあまた今度で良いか…とそのままスーパーに向かった.冷蔵庫のなかには訳あり品の割引で買った緑色のパプリカが入っており,これをなにかと調理して,翌日のお弁当のおかずにしたい.スーパーでは,モツのパック…

2016年に読んでおもしろかった本

今年は,論文を読んでばかりで,あまり本を読めなかった.来年はもっと読めると良いのだけれど… バルガス・リョサ (木村榮一 訳) 『緑の家』 複雑に絡み合って展開される物語のなかから,少しずつ全体像が見えてくる.まるで密林の茂った木々をかき分けなが…

ムーアの一週間

その研究所のある一帯を,私はムーア (moor) と呼ぶことにした.一週間を通いつめて,実験やら測定やらをしていた.最寄りの駅からはバスで20-30分,研究所の目の前のバス停は,終バスの時間が18時.それを逃すと,歩いて20分離れた病院 (別のバス停がある) …

密度

冬の空気は密度が高くて硬いから、アルコールくさい吐息も、上滑りする喜怒哀楽も、私のところまでは届かない。

手袋の気分

冬に,とても寒い国に行くので,その準備をする必要があった.昨年その国に行ったときには,日本で使っている薄めの手袋が,たった1枚の布でしかないことを,冷たすぎて痛くなった指とともにまざまざと気づかされた.先日,アウトドアショップで良さそうな手…

正しい11月の終わりの雨の日曜

1日中雨の予報が出ていて,自転車は端から諦めて始発で大学に向かった.秋の終わりの冷たい雨.朝はまだぬるいけれど,日中だんだん気温が下がっていく.日曜の居室にひとり.午後には気温がさらに下がり,身体が暑さに慣れてしまっていたせいか,暖房の温度…

アルコール

蒸し暑い森のなかの昼過ぎ,虫除けを顔に塗り,さて午後もがんばろうと思ったとき,揮発したエタノールの強い匂いが鼻に達した.そのとき,強いお酒を少しやりたくなった.気つけや強壮にお酒を飲むというのは,もしかしたらこういうことなのかもしれないと…

黄金

秋の落ち着かない雰囲気が好きではない.温度や光が,どこかぼんやりたそがれていて,夏や冬のような安定した空気に包まれている安心感がない.秋晴れの太陽の光も,そのあまりの疵のなさゆえに,よそよそしい気持ちになる.春は,ゆっくりだが着実に力強く…

「半」という概念がおもしろい.マレーシア語では"setengah"という言葉がそれに該当して,たとえば"jam tuju setengah"は「7時半」,"dua ringgit setengah"は「2.5リンギット」ということになる.時間やお金のという異なった単位においても,「半」という概…

ホットコーヒー

だいぶ寒くなってきた見慣れぬ街を抜けて,単線の電車に乗り込む.乗客はほとんどおらず,まあいいかと思って,朝作った,バゲットのサンドイッチを頬張る.香ばしくて硬くておいしい.しかし口の中が荒れる.大きな乗り換え駅について,次の電車まで15分ほ…

オレンジの日

敷布団が硬くてあまり寝付けなかったけれど,とにかく山小屋で目覚めた.外ではすでに焚き火がたかれていて,お湯も湧いている.ありがたい,ありがたい.川で顔を洗った後,秋の朝日が射し込む木立のなかで,コーヒーを淹れて飲んだ.なによりもこれがいち…

夜のお茶

寝る前に,お茶でも飲みながら本でも読もうかと思って,お湯を沸かす.しかし,お湯が湧くあいだに眠気がだんだん幅を効かせてきて,布団に潜り込みたくなっていく.お湯が湧いた頃には,お茶を飲んでゆったりしたい気持ちよりは,眠りたい気持ちが大きくな…

真珠

向こうの席に座っている人がカバンから何かを取り出したひょうしに、何か丸いものが床に落ちた。コロコロ転がっていったそれを見つめたその人は、拾い上げるでもなく、駅で降りていった。 あとに残されたそれは、電車の発着にあわせて前へ転がり後ろへ転がり…

月が真ん丸で煌々としていて、駅から出てきて森のなかを歩いているとき、街灯に照らされた影と、月に照らされた影と、両方とも私についてきているのがわかった。空気も比較的ぬるくて、月の光が暖かいような気になってしまう。 こんなところに場違いな印象を…

ゼリー

風邪をひいていたときに、食欲がなくなることを危惧して、カップゼリーを買っておいた。しかし、幸いにして食欲がなくなることはなく、ふたつのゼリーは冷蔵庫のなかで冷えながら夏の終りの1ヶ月を過ごしていた。 ちなみにカップゼリーはだんぜんナタデココ…

白い犬

家のなかにはたくさん動物がいて,もう真夜中なので,毛布にくるまったり,ぐしゃぐしゃと積まれた服の山に頭を突っ込んだりしている.寝ないで動き回っているものにはドウドウと睡眠をうながし,もう眠ってしまったものは起こさないように…! みんなが眠っ…

雨あがる

ここ最近あまりにも毎日雨が降ってばかりいたせいで,晴れているという状況が物珍しいように感じられてしまった.言ってみれば,普段とは逆に,雨が降っているとなんとも思わないけれど,晴れていると「おっ,今日は晴れか…」とあらためて気づくような.ここ…

凝視

以前,こんなことを書いた.同様のことが今読んでいる本に出てきたのだった. Business being over then, the Old Man turned his attention to me. Natives can stare and yet not be rude. I do not know whether this contradiction is in the quality of…

墨汁

夜中,カンカン線路を叩く音が少しだけ開けた窓から漏れ聞こえて,そのせいなのか知らないけれど,眠りが浅かったような気がする.初秋の冷たい空気が,音と一緒に入り込んできていた.朝,目が覚めたら,論文の査読結果が返ってきていて,ひとまずrejectで…

魔法

早朝の街は3割増しくらいになる. ぼんやりした灯りに照らされた幻想的な路地がちらりと見えたり,暗闇のなかでどこからか銀杏やお香の匂いが漂ってきたり,ふと袋小路に迷い込んで「こんなところがあったのか…」と戸惑ったり.今朝は,折れた先の道が急に石…

茄子の煮浸し

この世の中に茄子というものが存在していて本当に良かったと思う.いつもはトロトロになるまで炒めて食べるのだけれど,今回はたまたまみつけたこの記事に触発されて,はじめて煮浸しを作ってみた. 甘長唐辛子と炒めたあと煮込んで,油揚げはなかったので省…

何か果物みたいなものを食べていた.そのボリュームのほとんどが種で,噛み終わったガムみたいに,口のなかを虚無が浸していく.BB弾くらいの大きさの平たい種をたくさん,べえーっと舌に乗せて,げんなりしながら吐き出す.そんな夢を見た.

9月10日

9月10日,朝早くに目が覚めてしまい,まだ暗いなかを大学へ向かった.玄関から一歩踏み出した瞬間に,この日を境にして,夜はもう秋に変わってしまったのだということを理解した.ふだん通らない道を行き,普段は見ない街の横顔を見た.

秘すれば花

本当に大切なことは自分の内側に留めておかなければならない、私の場合。口に出して人にそれを言ってしまうと、そのことだけでもう何かを成し遂げたような気になって、ふんばる力がなくなってしまう。 自分の夢を常日頃からまわりに喧伝しておくと、まわりの…

夜の音

夜の音は漠としてあやふやである。 秋の気配がちらちらと見えかけてきて、夜には虫の声が聞こえるようになった。では、他の季節はどうだろうと考えたところが、思い出せない。真夏にはセミの大合唱が聞こえていたような気がするけれど、それは昼間のことであ…

天気の変化

朝、蒸し蒸しと重たい空気を縫うように、まだ暗いうちから職場にでかけた。重たい雲が空を覆っていて、職場について少しすると、ざーざーと雨が降ってきた。 ときどき雷鳴がして、暗い赤銅色の空から湿った風が吹いてくる。朝なのにずいぶんと暗い。雨は昼前…