よるのおわり

日々を愛でる

和菓子売り場

駅のコンコースとつながっているデパートの1階にはけっこう熱い空気が入り込んでいて,建物の中に入っても,首の裏あたりなんかに,まだ湿度を感じたのだった.土曜日の昼前で,どこを向いても人ばかりなのも関係しているかもしれない.あと1-2時間したらもっと混んでくるだろう.

そんな1階から,エスカレーターを探して,地下におりる.するとそこは食品売り場になっていて,特に和菓子のお店が向こうのほうまで軒を連ねている.筆でざざっと書いたような,どこかで見たことのある店名があちこちにひるがえり,爽やかで淡い色の和菓子をショーケースのなかに入れたり,看板にして出したりしている.空調はよく効いていて,外を歩いているうちにじっとり服にしみた汗が,すうっと乾いていくのを感じる.

抹茶の鮮やかな緑色や,すきとおった水色の寒天に,つぶあんの深い赤黒色.デパートの地下の和菓子売り場には,ひときわ夏があふれている.

ストレルカ

大福製菓の「ストレルカ」というお菓子をみつけたので,買ってみたのだった.ずっしりした重さにもかかわらず200円.すごい.

ところでこのお菓子,中に入ってるのは何だったっけ…とWeb検索すると,最初にヒットしたのはソ連の宇宙犬だった.スプートニク5号に乗って,宇宙で1日を過ごしたあと,無事に地球に帰還してきたらしい.ふむふむ.

宇宙に行った犬のことを考えながら,アイスコーヒーと一緒に,冷房のきいた部屋で,9分の1切れをおやつに食べた.アーモンドの香りがすてきだった.

ヒノキ

空港で荷物の重さを計測したら、8キロくらいあった。それを背負って、終電の終着駅からひたすら歩く。なんせ終バスが20時にあるようなところで、駅前にタクシーが停まっているわけではもちろんなく。目指す宿は5-6キロ先で、ウェブサイトの案内には徒歩1時間と書いてあった。

 

夏の夜の涼しい風がさあさあと吹いて、星がたくさん見えて、両脇の田んぼからは蛙の声が響いていた。ところどころで電灯が足元を明るく照らし、ふと気づくと空には、雲を透かして、真っ赤なような大きな半月が浮かんでいた。

 

電車に乗る前に買っておいた麦茶をあおりながら、すこし呑みすぎた日本酒の酔いをさますようにして。車もほとんど通っていないから、歩道よりも平らで歩きやすい車道をひたひた歩く。やはり結局1時間歩いて、もっと山奥に近づいた川のせせらぎが聞こえるところに来て、目指す宿にやっとたどりつく。

 

ひとしきり説明を受けて、じっとりへばりついた汗を流そうと浴室に入ると、意外にもヒノキの大きな浴槽が現れて、貸し切り状態で、重たい荷物に痛めつけられた身体をゆっくり伸ばしたのだった。

 

そろりそろりと部屋に帰り、すでに日付が変わっていることを確認して、すぐに充ち足りた気分で眠りに落ちた。

ぜんざい

仕事が終わったあとにホームセンターまで行き,今度の調査に使えそうな道具を探した.そのあと,併設されているイートインに寄って,ぜんざいを一緒に食べたのだった.1日の終わりの日暮れどきで,まだ熱気がこもっているものの,だいぶ過ごしやすくなっていた.外の席に座ると,ぜんざいの冷気と,その弱った暑さが,ちょうど良いバランスになるように思った.

こちらのぜんざいには金時豆が使われているそうで,ぷっくりふくふくしていておいしい.氷のしゃりしゃりした舌触りに,やさしい黒糖の甘みがからまって,さっぱりしたおやつという雰囲気.ちゃんと専門店のぜんざいを食べに行かないといけないねと言いながら,夕暮れどきの公園をふたりでぼんやり眺めていた.

家に帰ってから,ゴーヤーのチャンプルーをつくり,贈り物にもらったハムを焼いて食べた.飲んじゃおうか…?と言いながらビールを出してきて,とりとめもないことや仕事のことを話し合いながら夕食にして,お風呂に入って,すぐに眠くなって,布団に入った.

なんでもないけれど,なんだか幸せな夕方.