よるのおわり

日々を愛でる

犬と猫

信号待ちをしているとき,犬をつれたおじいさんのかぶった帽子が風にあおられて飛ぶ.ささっと半身を動かして,はっしと帽子をつかまえて,おじいさんに渡す."Thank you"と言われる.

おばさんの連れたモップみたいな黒い犬が,リードを脚に絡ませて,ひゃんひゃんと飛び跳ねるようにして,変な歩き方をしている.おばさんはそのことに気づいていない様子.数メートル進むと,リードはうまくほどけたようで,黒い犬はとことこと歩いていった.

公園に,毛足が長くて,ケナガマンモスみたいな犬が散歩されていた.お尻の毛には枯れ葉が一枚くっついている.ひとごとながら,彼女/彼が,枯れ葉のなかでごろごろ転げまわって遊ぶような趣味を有していないことを願う.

日曜の朝,駅に行くとき,窓の外を眺めている猫がいた.置物かと思ったけれど,こちらのほうを見たので,生きているとわかる.渋い顔をしており,しばしみつめあう.まだ飼い主は起きていないのか,電気はついていない.家の中は暖かくて平和そう.

長い帰路

午後から,知人の家へ.市内の乗り物が安くなるカードを購入しようとするも,近隣の駅の自動販売機はすべて,日曜のためか,販売を停止している.一駅歩いてもっと大きな駅にやってくるも,こちらでもだめ.そしてどこにも駅員さんはいない.事務所もない.こんなことなら,空港から戻ってくるときに買っておけばよかった…

仕方ないので,通常の切符で目的の駅に行くことにする.チケット販売機ではきちんと目的の駅名が表示されるのに,路線図にはどこを探しても見当たらない.仕方ないので,一駅隣りのハブ駅まで電車で移動する.こちらの路線図にも表示されていない.検索,Googleマップと試して,もしかしたら地下鉄の系統が違うのかもしれないと思いつく.一度地上に出たのをまた降りて,空港とつながる系統に行くと,目的地の書かれた路線図が出ている!

十分に時間をとって出てきたものの,この時点で,約束の時刻に間に合うかあやしくなっている.地下鉄は途中から地上に出て,新都心のような,だーっと広い場所を通っていく.知人は駅のプラットフォームで待っており,約束の時間きっかりに電車が到着した.


知人の家からは,歩いて帰ってみることにする.新都心を抜けて,途中から,荒野のような自然公園に入る.いままで歩いてきた庭園や公園とはレベルが違っていて,雄大で広くて,自然の匂いを感じる場所.近くにあったら毎日歩きたくなるようなところ.

Googleマップを頼りに,広大なその公園を通り抜けていく.日はもう沈んで,空はだんだん暗くなっていく.公園を抜けた頃にはもう,夜になっていた.


そのまま,ふと思いついて,中央駅のほうへ行くことにする.もしここでカードが買えれば電車に乗って買える.買えなかったら引き続き歩いて帰る.途中で巨大なショッピングセンターを抜ける.冷えた体を温める.それにしても,自然公園と比べると,なんだか虚ろな空間のように見えてしまう.

ショッピングセンターを出ると,硬い雪が本降りになっている.粒がコートの表面を跳ねて,滑り落ちていく.雨でなくて良かった.道を急ぐ.

中央駅は,その名の通り非常に大きく,クリスマスの飾り付けもされて,壮麗だった.これを見られただけでも来て良かったかもしれない.そうして,ここでは例のカードを購入できる.これでひと安心.


ここまで来たからにはと,半ばヤケ気味の気持ちで,電車には乗らずに歩いて帰ることにする.イルミネーションが輝き,人でにぎわう遊園地の前を通って,Rが来たときのためにパンフレットを一枚持っていく.街の広場には大きなクリスマスツリーがあり,ソマリアスーダンの国旗を持った人たちが,一台の車のまわりに集まって,気勢をあげている.

また川のほとりに出て,昼間ほどは人や車が多くはないものの,深夜に比べるとやはりにぎわっていることを確認しながら,ひたすら歩く.足がこわばってきて,さすがにだんだんつらくなる.

やっと家の近くについて,明日のパンを買い,帰宅後,冷蔵庫からはソーダ水を出し,ぐいっと飲んだ.総計2時間半,Googleマップで調べると13 kmの道のりだった…

人魚姫

朝,人魚姫を見に行く.日の出の頃合いをねらって,ミラーレス一眼を引っ掴んで家をとびだしてきたのは良いものの,雨がぽつぽつと降り始める.カメラって濡れると良くないよな…などと思いはじめ,先程の勢いもどこへやら,しょぼしょぼと家に戻る.

しかし,ここであきらめると,面倒になって,この先も行くことがなくなってしまいそうである.気力を振りしぼって,改めてカバンと折りたたみ傘を取り,ふたたび家を出る.橋を渡る頃には,硬い細かな雪が降ってくる.

雪はだんだん強くなり,人魚姫についた頃には本降りになる.そのかわり,朝早い時間ということもあり,見物客は数人.静かに何枚か写真を撮っている.像の横に白鳥が2羽おり,ゆうゆうと泳いでいる.

私も写真を撮り,家に帰る.熱いコーヒーを淹れて,午前中いっぱい仕事のつづきをしていた.

長い散歩

昨夜は遅かったので,遅くに目が覚める.それでも外は暗く,よしそれなら…とランニングにでかける.星型の要塞を一周して戻ってくる.すれ違ったのはせいぜい2-3人.


天気もよく,昼前から散歩にでかける.前回はだんだん体が冷えてきて,途中からけっこうつらくなって散歩どころではなくなったので,今回はしっかり厚着する.

まずは動物学博物館を目指す.その道すがら,大きな公園を通り抜ける.この公園には正直あまり期待していなかったのだけれど,結果的に,今日訪れた場所の中ではもっとも気に入ることになる.

こちらの公園や庭園には,もはや真っ青になって,歴史の流れを感じさせる銅像が,ほとんど確実に置いてあるのだけれど,この公園では,南側の入り口のところに,ひときわ大きな銅像があった.中央の人物を左右に取り囲む貝殻.何の意味があるのだろう? 公園の中にはアート作品も置いてあり,ほうほうと思いながら眺めていく.

そして大きな大きな芝生の広場.向こうのほうまでは300 mくらいあるだろうか.道がついていたりもするけれど,気にせず芝生をかきわけていく.北のほうには,大きな池もあった.

公園を出てすこし行くと,動物学博物館にたどりつく.落ち着いた空間に,きれいに展示されたさまざまな動物標本.来ている人たちはほとんどが子供連れの家族で,館内には自由にごはんを食べられるスペースもある.ひととおり館内を見た後,このスペースで,作ってきたサンドイッチを食べ,淹れてきたコーヒーを飲む.展示室と違って,休憩スペースは窓いっぱいの部屋で,あたたかい陽光が差し込む.

お昼を食べた後,もうちょっと遠出しようと,ひとまず墓地を目指す.その道すがら,パン屋さんに入って,クリスマスの時期に出回る?デニッシュのようなパンを食べる.サンドイッチは少ししか作ってこなかったので,たぶんお腹が減るだろうと思って.

パン屋さんから墓地はすぐそこで,工事中の区画を迂回して,中に入る.区画分けされて石の墓標があるところは日本の墓地と似ているけれど,ここは緑がいっぱいだった.芝生に覆われて,小ぶりな灌木や大きな木があちこちに生え,植物でもそっと墓標を覆ったようなお墓も目についたりする.

松ぼっくりをかわいく供えたり,墓標にリスが彫ってあったり,創意工夫が見られて楽しい.日本の墓地のような無機質な空間ではなく,庭園のような,自然に包まれた空間に墓地があるのは,すてきだなあと思う.

墓地を出て,庭園を目指す.幾多ある庭園の中でも,ここは特にきれいな場所と聞いていたので,期待も高まる.わりとこじんまりしているけれど,もちろん銅像があり,池があり,富士塚 (と勝手に呼んでいる) があり,さまざまな植物が植わっていて,たしかにすてき.

しかし,今は冬である.バラ園のような区画もあるけれど,どの植物も寒さに震えて,地味な色をしている.春や夏の良いときに来たら,たしかにここはきれいな庭園になるのだろうなと想像しながら,ひととおり歩きまわる.しかし冬の庭園というのも捨てたものではなく,ススキが震えていたり,生け垣の枯れ葉がかさかさと音を立てたり,なかなか趣がある.

子供が3人,かくれんぼをしているのを横目に,庭園を後にする.薄着で元気だなあ….

帰りは,川のほうの道を通る.住宅街の中のゴミ収集所のようなところにクリスマスツリーが灯っていて,ガレージセールのようになっているので入ってみる.人が棚に品物を並べていて,お客さんが数人いる.ほとんどは本で,残りはだいたい食器.

マグカップを探していたのだけれど,鳥が描かれたすてきな柄のものをみつける.品物を並べている人にいくらか聞くと,無料とのこと.セットになっているからもう一方の絵柄ももらっていって,と言われて,ふたつを手にして出てくる.おそらく,ゴミとして回収されたもののなかからまだ使えるものをより分けて出しているのだろうと思う.どういう仕組みで運営されているのか,詳しく聞いてくればよかった.

さらに帰途を歩く.途中,歩行者天国のようになっている繁華街があって,路面に,服や食べ物やアクセサリーの出店がでている一帯があった.雰囲気がなんだか日本のお祭りのようで,ちょっとおもしろい.ホットワインを飲もうかとも思ったけれど,厚着してきたおかげで今日はあまり冷えていないし,値段も安いわけではないので,やめておく.

途中から川に出て,昨夜帰ってきたのと同じところを歩く.昼間はたくさん人が歩いていて,たくさんの水鳥たちが,首をすくめて漂っていたり,潜って何かをぱくついていたりするのを見る.

3時間半くらい歩き通しで,家まで帰ってきた.お腹がすいていた.

夜の白鳥

クリスマスパーティを抜け出して,日付が変わるすこし前くらいの街を歩いて帰ってくる.いつもとは違う場所からだったので,思い切ってルートを変えて,川のほとりを歩いてみる.真っ暗だけど,吐く息は白く見える.

向こうの方まで,背の低い明かりが並んでる砂利道を通る.強い風が吹いて,水面が波立つ.白鳥がかならず2羽一緒のペアで浮かんでいて,ときどき首を水のなかに突っ込んでは,またもとの体勢に戻る.餌でも食べているのかな…? 白鳥は眠らないのだろうか.夜中まで大変だ….

対岸の方に半月が浮かんで,その光が波立つ水面に反射して,こちらのほうまで届いているように見える.背の低いすてきな建物に,クリスマスの電球がからみついて,ところどころ街が光っている.