よるのおわり

日々を愛でる

Jenaのお散歩

休みの時間に、Phyletic Museumを見学にでかける。系統樹がコンセプトの博物館とか、サイエンスとアートの融合とか聞いて期待していたのだけれど、展示内容はちょっと期待はずれ。教科書に書いてあるようなことを実物標本を用いて表現しようとしている意図は伝わってくるのだけれど、わあ…! と心に響くものがいまいちない。

思ったより早く博物館を出て、全景を撮ろうと、前の池を回りこむと、なんと池の水の底にラエトリの足跡が掘られている。この正体にきちんと気づいてくれる人は何人いるだろうか…と思いながら、博物館を後にする。

また別なときには植物園に。コペンハーゲンの温室に足を踏み入れたのは冬だけだったから、夏のヨーロッパの植物園をきちんと歩くのはこれが初めて。珍しく使えたクレジットカードで4ユーロを払って、温室のなかを散策する。サボテン、食虫植物、オオオニハス、ヒカゲヘゴ、などなど。

サボテンの部屋のドアは開いていて、猫が中に入って日向ぼっこをしていた。慣れているのか眠いのか、近づいてもまったく逃げる気配がない。亜熱帯の部屋にはクロウタドリがいて、地面をさっさか駆けまわっていた。そうそう、中庭にはあじさいが植わっていた。

温室をでて、お金を払わずとも入れる園内を歩く。夏の午後の光があちこちに満ちていて、空気はカラッとしてさわやかで、植物は鬱蒼とした葉をつけ、果実を輝かせているものもたくさん見かける。無造作に置かれた彫刻も、いい味を出している。築山を登った上で、風が吹いて、身体が涼しくなる。ツル性の植物がたっぷり絡まった、イギリスやフランスの宮廷文学に出てきそうなあずまやでは、大学院生くらいの人びとが8人ぐらい、楽しそうにおしゃべりをしていた。

会場に戻るとき、信号待ちをしていると、向こうに立った女性がアイスクリームをなめている。続いてやってきたカップルも、それぞれにアイスクリームを持っている。ちょっと顔を落として、またあげると、もうひとり、アイスクリームをなめる大人が増えている。

ちょっとお腹が空いてきたこともあって、なんだか私までアイスクリームを食べたくなってくる。信号を渡り、向こう側の繁華街をきょろきょろしながらあるく。50 mくらい歩いた後、すぐにジェラートのお店がみつかり、さまざまなフレーバーを前に逡巡する私がそこにいた。チョコミントのような"After eight"も気になるけれど、もしかしたらお酒でも入っているだろうか。そして蛍光色の緑がちょっと毒々しい。

前に並んだ2人の注文し終わる順番を待っているときに、ふと店の外を眺めると、観覧車がすごい速度で回転している。しかも屋根はない。恐ろしい……

私の順番が来て、苦し紛れに"バニラ!"と注文する。バニラ、けっこう好きなのだ。シンプルであるがゆえに、お店の個性もよく見えるような気がするし。1.24ユーロ払って、ワッフルコーンの上にはみ出しながら盛られたアイスクリームをなめながら、ちょっと離れた路地のベンチに座ってバニラをなめる。空は青くて、空気はどこまでもさわやかである。

休暇

月曜なのでどこもすいている。

 

午前中は識名園に行き、ときおり雨がザーザー降ってきたりするなか、庭園を歩いた。池にぷかぷかとたくさんの藻が浮いており、見た目には不思議な雰囲気になっている。よく見ると、水底にも同じような藻が繁茂しており、これが天然記念物のシマチスジノリなのだろうか…と思っていたのだけれど、違ったらしい。

構造は回遊式庭園なれど、生えている植物は明らかに亜熱帯のものだし、建物は赤い瓦の琉球スタイルで、しかし東屋なんかは中国風。園全体に不思議な雰囲気が満ちている。

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その後、新原ビーチに行き、カレーを食べる。食後、海に入る。遠浅のビーチが干潮の時間で、岸から50メートル以上離れたところまで、膝の上まで濡れることすらなしに歩いていける。

海水を吸いこんだ石灰岩がぽたぽたと水をたらし、小魚の群れがいるところの水面にはぷつぷつ泡が立つことを知った。(曇天だったこともあって、最初は雨が降っているのかと思っていた)

月曜だからか、ときおり雨が降る曇り空だからか、人は少なく、見渡す限り数えても、20人もいないくらい。みんな思い思いに楽しんでいて、去年の夏に来たときの喧騒(といってもだいぶ静かなほうだけれど)を思い出していた。

 

ぽつぽつ雨が降りはじめた頃に帰り支度をはじめ、本降りのなかを、気になるお店に寄ったり、ぜんざいを食べたり、コーヒー豆を買ったりしながら、帰ってきた。

イカの納品

カフェの2階でお仕事をしていると、向かいのビルの前に小さなトラックが停まる。荷台の上に、キャップをかぶった人がひとり上がる。荷台はのっぺりした長方形で、上面に丸い蓋がついている。様子を見ていると、どうやら魚を行きたまま運搬するトラックのようだ。丸い蓋からのぞくタンクの内部には水が詰まっていて、おそらく酸素を供給するためか、しゃわしゃわと泡立っている。

荷台に上がった男の人は、はじめに、魚屋でよく見かける白いバケツに、タンクから海水を汲み、荷台の下にいる別な人に手渡す。これをもう一度くり返す。海水はいいから早く魚を……と気がはやる。

次に、キャップの男の人は、バスケットをひとつずつ手に持つ。どこにでもあるような、100均で買えるような、水色のプラスチックの、浅いバスケット。これをタンクのなかに入れて、魚を取り出す。魚は、タンクの口のところに集められているのだろうか。バスケットを入れて、向こうの方からこちらに集めてきて、そのまま、よっと取り出すと、バスケットの上にぴちぴちと跳ねているのは、たくさんのイカである。

これを手早くひとつのバスケットにまとめて、傍に置いてあったはかりで重さを測り、下にいた人に手渡す。下にいた人は、なにやかやをして (2階から見ているので、トラックの荷台の上の出来事はばっちり見えるのだけれど、トラックの下でおこっている出来事は見えない)、台車を押して店のなかに入っていく。

店のなかに入っていった人が数分後に出てくるのを待ったあと、キャップの男の人はもう一度同じことを繰り返してイカを納品し、そうして納品は終わったみたいで、蓋をしめ、はかりやバスケットをそばに置いて、男の人は荷台を降りて、トラックの運転席に入り、トラックは行ってしまった。

家のよそよそしさ

今年の夏は出張や外での仕事がつづき、数週間腰を落ち着けて家にいるということがない。家にいる日数が短いと、時間をかけて消費する食材も買いづらいし、出張と出張のあいまの仮の日々みたいな気がして、家での生活をきちんと整える気力がなかなか湧いてこない。

家に手をかけないと、ホコリがたまり、冷蔵庫は貧相になり、スーツケースと荷物は片付かず、家に対する愛着がなんとなく薄れる。なんだかよそよそしい関係になる。そうなると、家にいても、ゆったりくつろげるわけでもなくなって、なんとなく家に居づらくなる。

これは良くないと思って、今日は慌てて掃除をして、洗濯をした。

異国の風邪

冬の3ヶ月間を過ごした北欧の国に、研究会と実験のためふたたび戻る。季節は夏。夜の20時過ぎまで明るくて、乾燥した涼しい気候。しかし、これまでの島の疲れや寒さも溜まっていたのか、着いて翌日、乾燥に喉をやられたのを発端にして、なし崩し的に風邪をひいて寝込んでしまう。

1日目 (月曜) は全身がだるく、2〜3日目は頭が熱く、4日目からは復帰したものの頭がふらついた。ここまで体調が悪化した風邪は10年ぶりくらいのような気がする。頭があまりにも熱いのでインフルエンザを疑い、2日目の夜には保険会社経由で病院を予約し、夜20時に電車に乗ってでかけていった。夢のなかを歩いているような気分で病院にたどり着き、診察を受けると、熱は38度しかなく、インフルエンザではなく普通のウイルス感染ではないかとのことだった。

当初は、3日目には回復しているだろうと期待していたのが、思ったよりつらくて、長引いてしまった。4日目には実験を始めなければいろいろなことが終わらないので、11時くらいまでベッドの上でごろごろしながら、なんとか大学に向かった。

いざとなったら、宿のホストや滞在先の研究室の人たちがいるから、異国の地にあるという不安はなかったのだけれど、食欲がなくなってしまって困った。黒パンもスープも普段は大好きなのだけれど、風邪をひくと一気にそういうものが食べたくなくなってしまい、3日目まではほとんどフルーツとジュースだけでしのいでいた。3日目の終わりになってやっと食欲が出てきて、カレーと米なら食べられる…と、ほうほうの体でスーパーに行き、冷凍食品のタイカレーを買い込んで食べていた。

5日目にはだいぶ回復したものの、実験器具がみつからないという手違いがあり、そのリカバリーのために手を尽くしていたら、実験が夜中までかかってしまった。すべてが終わったのは午前2時。電車の中では、金曜の夜に夜通し騒いでいた若者たちを横目で眺めつつ、へとへとになりながら帰宅した。風邪をひいてずっと寝ていたおかげで、眠気だけはそんなに強くなかったけれど。

そうして土日に最後の実験を終わらせ、共同研究者とお昼を食べて、帰ってきたのだった。今回ばかりはさんざんな滞在だったけれど、風邪が治ったあとに友人たちにも会えたのは、唯一うれしかったことか。