よるのおわり

日々を愛でる

寒い雨の夜

実験で遅くなった.夕方からはしっかりした雨が降り出していた.気温も下がって,寒い.

帰り際,川辺の港みたいになっているところを通りかかったときに,水面に白色のぼわぼわしたかたまり (けっこう大きくて,70 cmくらいはありそう) がふたつ浮いているのに気づく.まわりにもうちょっと小さな茶色のかたまりもたくさん浮かんでいて,どうもそれらは水鳥のように見えるから,白いかたまりは白鳥なのではないかと推測して近づいていった.

予想は当たって,真っ暗な夜の水面に,白鳥は首をすくめてじっと水面に浮かんでおり,ほかの水鳥たちはそれよりかは多少元気にぱしゃぱしゃやっていたのだった.こういう寒い雨の夜に,水面に浮かんでいるのはどういう気分なのだろう…? 仲間がけっこういるし,あんがい楽しいものなのかもしれない.

急ぎ足で通り過ぎる住宅街で,白い大きな犬をつれたおばさんを前方に見る.犬は楽しそうに道路にとびだし,おばさんがそれをぐいっと引き止めて,危ないでしょ!車にひかれたらどうするの! といった体で犬をじっと見る.犬はちょっととぼけたふうをして,モップのような毛をぶるぶるっと振るって水滴をとばした.おばさんがまた,とがめるような雰囲気をにじませる.

それともうひとつ,なにかおもしろいものを見たのだけれど,忘れてしまった.

そんな寒い雨の夜.

ゆったり

日曜日,起きて最初にスーパーに行き,おみやげや日用食品を購入する.早朝の街にはほとんどだれもおらず,外に出てタバコを吸っていた店員さんは,散歩の途中に休んでいる黒い大きな犬を挟んで,飼い主と談笑していた.

朝ごはんを食べ,仕事を進め,久々のコーヒーを飲んだ後,RとWeb越しにおしゃべりをする.Rとしゃべると,なんだかこう,自分のなかのペースがしっかり噛み合っていくような気がしてくる.

お昼前にでかけて,昨日たまたま張り紙をみつけたクリスマスマーケットへ.アパートの一室を開放した手作り感にあふれる場所で,女の人たちが子守をしながら店番をしている.手作りのグリューワインと,ジャムをつけて食べるたこ焼きのようなお菓子 (Æbleskiverというらしい) を買って,部屋の椅子に座りながら,並んでいるクリスマスの飾り付け用の品物をゆったり眺める.グリューワインは白で,松の実とザクロが入って,アルコール度数は低めだった.やさしい味で温まる.

庭園に行って写真でも撮ろうかと思っていたけれど,雨が本降りになってきたので帰宅.お昼を食べて,お仕事のつづき.Rに勧められて買ってみたサラダペーストのようなものは,けっこうおいしかった.カレー味.15時過ぎ,人の気配がして,ホストが帰ってくる.こちらに来てはじめて会ったけれど,するどい人,という感じ.別の部屋に泊まっているカップルとは,明らかに,身にまとっている空気が違う.

仕事が一段落ついたのでまた外にでかけて,普段は歩かない方向へ行ってみる.ホームセンターやスタジアムがあり,あっという間に日が暮れてきたため,くねくねと散歩しながらまた帰宅.朝から冷やしておいたビールを開けて,チーズと一緒に飲む.その後,またひと仕事した後,なし崩し的に夕飯を作りはじめ,夕飯を食べ終わった後にもつづきをする.

なんだか飲んでばかりのような気もするけれど,たまにはこういうのも良いのかな.ゆったりした良い休日.

寒い土曜

土曜日,晴れだったので,カメラを持って街に飛びだした.いろいろプランは練っていたものの,通り道にした要塞が思ったよりすばらしくて,ここでけっこう時間を食ってしまった.そして薄着で出てきてしまったため冷え切ってしまい,ちょっとあたたまる必要が生じた.

博物館に向けて街を歩いていると,運良くクリスマスマーケットに出会い,グリューワインを1杯.温まったけれど,頭もすこしふわふわしてしまう.H&Mを冷やかしたりしながら,だいぶ長い道を通って,博物館へ.このあと何度も来るだろうということで年パスを購入して,1階だけささっと観てまわり,じっくり観たり2階以上を観たりするのは今度にすることにする.

外に出ると曇っていて,霧まで出てきていた.寒い….そして時刻はお昼をまわり,お腹も空いてきた.庭園なんかも回りたかったけど,この天気と,そして体が冷えてお腹が痛くなってきたため,家を目指して帰ることにする.

ただし,半分は意図せずに,いつもとは違う道を通って遠回りしてしまい,しかし,きれいな湖の土手を歩きながら,作って持ってきたちょっとしたサンドイッチを頬張ったりする.

家についた後には,玉ねぎのスープを作ってアツアツのうちに飲み,その後シャワーを浴びて,クリスマスエールを夕方から飲み始めながら,ちょっと仕事を進めたりした.

窓の雨

曇りの日には,8時くらいからやっと明るくなってくる.どの家の窓にもカーテンがなく,電気がつくと向うの家の中が丸見えになる.(ブラインドはあるけど開いていることが多い).

予報の通り,9時過ぎからはポツポツとした雨が降ってきた.向うの窓を見ると,間接照明窓に向けて光を投げているところだけ,窓ガラスについた水滴が見える.ぽろぽろとオレンジ色のきれいな水滴が照らされている.

セントラルヒーティングのため,家の中は暖かそうである.(もちろんこちらも暖かい).

雨の金曜日

金曜日,なんだかみんな,週末の予感にそわそわしているような感じ.私も,こんなに週末が待ち遠しかったのは,会社員をやっていたとき以来だろうか.(きちんと環境が整っていないにもかかわらず,仕事場に,なんとなくいなければならなくて,また本格的に仕事が始まっていなくて宙ぶらりんで,生活のほうもそこまで整っているとは言い難くて,なんだか必要以上に平日が疲れてしまう).

職場の女の子たちが夜にお家で映画を観るらしく,私のことを誘ってくれる.でも家の鍵のことが気になるので,(というかそれ以上に内向的な性質なもので),丁重にお断りして,ぜひまた今度.

物価が高いから,身の回りのモノを整えて気を落ち着かせることもできないし,ひとりで暮らしていてキッチンも万全ではないから,料理で気分転換することもできない.早朝の静かな時間と,行き帰りに30分ずつ歩く時間が,生活に噛みごたえを与えている感じ.これをひとりで3ヶ月過ごすのは,確かにRの言うとおり,大変だなと思う.

今日は,やっと初めての「お仕事」を開始した.帰りには初めての道に足を踏み入れてみて,雨に濡れて静かに整った住宅街を楽しく通り過ぎる.Black Fridayのお店で,ちょっと気になっていた靴が安くなっていたのを買い,スーパーでちょっとした伝統的なお菓子も選んできた.その後もう一度スーパーにでかけ,白ワイン1本とビールを1缶.お酒だけは日本と変わらない値段.缶ビールは冷蔵庫の奥に入れて冷やしておき (明日の楽しみにしよう),さっそくワインを開けて,チーズを切って,晩ごはんを作る前にちょっとだけ飲んだ.

晩ごはんは,スコーンを焼いたのと,ラタトゥイユ.材料が余ってしまうから,ここ数日ずっとラタトゥイユを作っているけれど,野菜が美味しくてぜんぜん飽きない.デザートに伝統菓子を食べようと思っていたけれど,お腹がいっぱいになったので明日にする.朝早く起きたら,お茶かコーヒーと一緒に食べようかな.

こちらでの生活には,時間の余白だけはたっぷりあるから,仕事を進めていきたいと思う.あちこちで育ってきている成果を収穫すること.そしてもちろん,こちらで初めた仕事で,新しい種を蒔いてきちんと育てること.

どうなるかわからないけれど,それだから,今の時点の印象で自分の生活を塗りつぶしてしまわないように,気をつけなければ.