ところどころに雪みたいなものが積もっていて、昨夜はもしかしたら局所的に雪が降ったのかもしれなかった。(そして風に吹き寄せられて、ところどころに集まったのかもしれなかった)
自分の足跡が残るのが楽しくて、まっさらなところを探して歩いた。
凍った池の上にぽつんと残された排水溝の金網は、場違いな蜘蛛かなにかのように見えた。
ビルの建築はだいぶ進行しており、4階の窓より高くなっている。1ヶ月前にはその向こうにかろうじて荒野が見えていたけれど、今はビルが邪魔してもはや見えなくなっている。
ビルのいちばん上の階で作業をしている人が、弱い朝日を受けている。あの場所からはきっと荒野が見渡せるだろう。風の強い寒い朝で、なにかよくわからない機材に巻かれたビニールがはためき、もっと上空のクレーンに吊るされた鎖と、それにつながったゴムが、ぐるんぐるんと震えている。
これを見たとき、朝の良さが凝縮された光景だと思った。願わくばそのまま時間が止まり、1日の始まりだとか昼だとか、そういうものに汚されなければ良い。
…建物を出たときには、冬の朝の、おだやかでキリッとした匂いがした。
数日間は,体内時計を維持するために,普段とは真逆のリズムで生活を送っていた.日付が変わったあとしばらくしてから布団に潜り込み,昼前まで眠っている.ある晩には雪が降ったりしていて,朝起きると外は一面真っ白で,昼前の明るい光に照らされて,なんだかやたらと無気力に輝いていたりした.
そして,最初の飛行機は飛ばず,空港で徹夜をしたのち,早朝に解放され,眠る場所を求めて埃っぽい日差しのなかをふらふらと彷徨したりした.ホテル関連は軒並み全滅で,けっきょく,タバコ臭いネットカフェの個室に入って横になった.24時間後に飛行機は無事に飛び,やはりいちばん落ち着くこの場所に帰ってきた.
曜日の感覚がなくなることはたまにあるけれど,時間の感覚までおかしくなったのは初めてだった.