よるのおわり

日々を愛でる

2015年に読んでおもしろかった本

昨年読んでおもしろかった本を.もっときちんと解説したかったけど,そう考えていても時間が経つばかりだったので…


トルストイアンナ・カレーニナ
名作が名作と言われるには,そう言われるだけの理由がある,と十分に納得させてくれる作品.レーヴィン,アレクセイ,ウロンスキイのそれぞれ違った苦悩・葛藤と受容の過程が,いずれも「ああわかるなぁ…」という感じで響く.


イサク・ディーネセン『ピサへの道』『夢みる人びと
バベットの晩餐会』と同様に,しっかり精緻につくりこまれた優雅な物語.時間をかけてゆっくり味わうように読んで,そして結末を知ってから再読したくなる.


プイグ『蜘蛛女のキス
非常に奇妙な作品.会話で成り立ち,映画のすじが断片的に語られるといった制限された描写が,かえって小説全体に臨場感を生んでいる.監獄という薄暗い狭い世界のイメージを喚起させ,テロリストや中年のゲイというマイノリティな人物の存在の「はかなさ・ぼんやりさ」とどこか呼応するものがある.


ジュンパ・ラヒリその名にちなんで
淡々と進む短い文章が,親子2世代にわたる壮大な長編を形作っていくさまが,それはもうみごと.国も文化も違う体験・人生が,日本語で読んでいる自分の頭にもすっと入ってきて,感情移入しているこの不思議.