よるのおわり

日々を愛でる

2016年に読んでおもしろかった本

今年は,論文を読んでばかりで,あまり本を読めなかった.来年はもっと読めると良いのだけれど…


バルガス・リョサ (木村榮一 訳) 『緑の家
複雑に絡み合って展開される物語のなかから,少しずつ全体像が見えてくる.まるで密林の茂った木々をかき分けながら目的地を目指すように.砂の降る明け方近くの夜の街のような重々しさがあると同時に,川をくだるように話が展開していくところもある.そうして,ところどころにはさまれる,すごく印象的な場面.素晴らしく素敵な小説だと思う.


柴崎友香きょうのできごと
特に何が起こるわけでもなく,ほんわりしたなんだか幸せな気分で読み終えられる.京都の鴨川のあたりの深夜の光景を想像して,ああいいなあ…と思った.


トーベ・ヤンソン (冨原眞弓 訳) 『誠実な詐欺師
北欧の,暗く寒く,しかし暖かくほっとする,不思議な雰囲気が,全体に漂っている.ひたすらかっこいいカトリ,雪解けとともに海の底に沈む家具や手紙,夜の森を駆ける狼のような犬…いろいろなイメージがあふれている.すごく良い.


河野裕子永田和宏たとへば君 四十年の恋歌
泣いた.でも,あぁいいなあ,短歌,つくってみたいなあ…と思った.

おほきな月浮かび出たり六畳に睡りて君ゐるそれのみで足る (河野裕子)