今年は,論文を読んでばかりで,あまり本を読めなかった.来年はもっと読めると良いのだけれど…
バルガス・リョサ (木村榮一 訳) 『緑の家』
複雑に絡み合って展開される物語のなかから,少しずつ全体像が見えてくる.まるで密林の茂った木々をかき分けながら目的地を目指すように.砂の降る明け方近くの夜の街のような重々しさがあると同時に,川をくだるように話が展開していくところもある.そうして,ところどころにはさまれる,すごく印象的な場面.素晴らしく素敵な小説だと思う.
柴崎友香 『きょうのできごと』
特に何が起こるわけでもなく,ほんわりしたなんだか幸せな気分で読み終えられる.京都の鴨川のあたりの深夜の光景を想像して,ああいいなあ…と思った.
トーベ・ヤンソン (冨原眞弓 訳) 『誠実な詐欺師』
北欧の,暗く寒く,しかし暖かくほっとする,不思議な雰囲気が,全体に漂っている.ひたすらかっこいいカトリ,雪解けとともに海の底に沈む家具や手紙,夜の森を駆ける狼のような犬…いろいろなイメージがあふれている.すごく良い.
河野裕子・永田和宏 『たとへば君 四十年の恋歌』
泣いた.でも,あぁいいなあ,短歌,つくってみたいなあ…と思った.
おほきな月浮かび出たり六畳に睡りて君ゐるそれのみで足る (河野裕子)