よるのおわり

日々を愛でる

ススキ

季節外れの台風のような強い風が吹いていて,もう少しで雨が降り出すところだった.

海に面した駅に電車が止まって,山側のドアが開いて,高い石垣の壁の手前に道路があり,道路と線路を仕切るガードレールがあって,そのガードレールの下から枯れたススキが,強い風にあおられて,どうどうとなびいていた.1 m以上はありそうな,数千本のススキが,シュラシュラとすさまじい音を立てて.

雨はまだ降り出していないけれど,開いたドアから吹き込んできた風は,濃い灰色で,生暖かく,湿っていた.停車時間の数十秒だけ,そうした圧倒的なリアリティが身を包み,ドアが閉まると何もかもがきれいに消えた.停車時間のあいだ,ずっと,開いたドアから外を見つめていた.

美しいと思った.