よるのおわり

日々を愛でる

2012年の6冊

2012年に読んだうち「特に良かった本」を6冊挙げてみる.

(「良かった本」は50冊くらいあった)

 

中島らも永遠も半ばを過ぎて

彼の作品を読むのはこれがはじめてだったのだけれど,そしてこれまで食わず嫌いをしていたのだけれど,のめりこんだ.人物の描写がとても好き.悪人も善人もいなくて,すごくくせのある愛すべき人びとが,しかも自然に描かれている.ほかに『今夜、すべてのバーで』も読んで,王道の積み重ねが非常な全体をつくるというか,彼の物語からはそういう印象を受けた.

 

宮本常一忘れられた日本人

そう遠くない昔に,日本に生きていた人々の民俗学的な記録.目の前でその人を見ているかのように,ありありと情景が浮かんできて,また,内容も,昔ばなしと現実の世界を半々にしたような雰囲気.いつの時代でも,人はそれぞれに喜び悩み,したたかに生きてきたのだなあという感慨があった.

 

森見登美彦夜は短し歩けよ乙女

ちょっと敬遠してたけど,案外 (というと失礼かもしれないけれど),とても好きだった.「ポップでキッチュ」という帯の文句そのままだし,羽海野チカの解説もすごくハマっていた.こういう小説があってもいいんだ,という快感.読後,なにか徹夜明けのときのようなさみしさが残った.

 

かとうちあき野宿入門

どこでどのように眠るか,という問題に正面から向き合った記録が,著者の半生とあわせて軽く語られている.いわゆる三大欲求のうち,食についての書物は氾濫していて,性についてもみな興味津々であると思う.しかし,睡眠については似非医学書みたいなものばかり.どこでどのように眠るかという,睡眠の生態学のような,そんな本があっても良いのにな,と.

 

辺見庸自動起床装置

ぼんやりとした眠りの世界と,夢のような覚醒の世界のあいだにあって,眠りの体液がこちらにしみでてきたり,眠りの海に頼りない探索を試みたりするような,そんなイメージがふわふわと鮮やかに浮かんだ.良い.

 

ヒュースケン 『ヒュースケン日本日記 1855~1861

幕末に日本にやってきたタウンゼント・ハリスの秘書兼通訳である青年の日記.彼と年齢が近いこともあるだろうけれど,文章から人柄が伝わってくるようで,わくわくしながら読み進めた.当時の日本の習俗についての描写も興味深い.