よるのおわり

日々を愛でる

過去の思い出

島での調査を終えて、夕方に羽田空港に着き、かつて博士課程の3年間を送っていた大学に向かった。ちょっとした用事を済ませて外に出ると、だいぶ暗くなっており、夕方と夜の境目をだいぶ夜に移動したところにあった。9月の終わりの、秋を感じる夜風が気持ち良い。
いままで、このキャンパスで過ごした博士課程の3年間は、わたしの人生の中でもひときわ素敵な時期だったと思っていた。そこには、自分の人生を自分の手で組み上げていく満足感と、圧倒的な裁量と、少しの寂しさと不安があった。ちょうどこんな時間に大学から帰宅していたことを思い出して、当時のことを考えていた。いままで、その3年間は自分の人生の中でもいちばん良い時期だと思っていたけれど、キャンパスから出て、夏の終わりの夕方の下町を歩いているとき、ではまた当時に戻りたいかと自問すると、答えはすぐに「No」と出た。すこし意外だったとともに、安心するようなうれしさをおぼえた。
良いことも悪いことも起こるけれど、いつだって今がいちばん楽しいと思えるような人生を送りたい。それはつまり、つねに成長 (わたしはこの「成長」という言葉が大嫌いではあるけれど…) しつづけているということであると思う。

博士課程の3年間は、わたしにとって、過去の良き思い出になったのだな。