よるのおわり

日々を愛でる

台南の宿

高雄空港まで2時間で飛び、そのあと電車に乗って台南の市街地へ移動した。MRTは飲食厳禁で、どこか日本の地下鉄を思わせる都会的な雰囲気なのに、台南鉄道はローカル線の雰囲気で、包子を食べている人がいたり、頭をもたせあって眠っているカップルがいたり、雰囲気の違いがおもしろい。


子連れだったので古民家を改装した畳敷きの宿を予約していったのだけれど、これが本当に良いところだった。カタツムリをモチーフにした静かな路地にあり、伝統的な造りの間取りにレトロな小物をいろいろ配しつつも、オーナーのこだわりと配慮があらゆるところに遺憾無く発揮されていて、すごく居心地が良かった。

特に気に入ったのは、洗面所の鏡がガラス越しのオブジェになっているところと、パブリックスペースに残された100年前の壁。特に壁の方は、雨が降るとガラスの天井に水滴が弾けるのが見えて、一部の水は壁をつたって家のなかを湿らすようになっている。それでいて、どちらもいやらしさがまったくなくて、古民家ののんびりとした雰囲気に完璧に溶け込んでいる。

この宿にはもうひとつ違う部屋もあり、今度台南に行くことがあれば、そちらの、テラス付きの屋根裏部屋にも泊まってみたいな。

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最終日だけ、この宿が空いていなかったので別なところに移ったけれど、両者の違いは鮮明だった。移ったほうは、日本でも最近よく増えているようなおしゃれなゲストハウスで、ここの畳敷きの個室をとった。見た目はたしかにおしゃれなのだけれど、化繊のシーツがかさかさしたり、マットレスが安物だったり、カーテンが薄くて朝はすぐに明るくなってしまったり、性能の悪いクーラーが寝ている場所を直撃したり。静かな通りに面しているようで、しかし夜中もバイクが行き交ったりしてうるさかった。なんというか、見た目だけは愛想が良いけれど、心がこもっていなくて、そこに泊まる人のことが真に考えられていない感じ。

この宿に泊まってから改めて古民家のほうを思い起こすと、地味だったりそのときには気づかなかったりしたところでも、泊まる人のことをしっかり考えて作られていたんだな…と理解できたりしたのだった。