よるのおわり

日々を愛でる

夜の電車

身体があまりに速く遠くまで移動してきてしまったので、心が追いつくまでに時間がかかった。人が少なくがらんとした空港を検査のために連れ回された後、解放されてもはやどこに行ってもいいのだという落差が、なにやら落ち着かない気持ちを作り出した。ひとまずスーツケースを送り飛ばし、都会に出て役所に行き、郊外まで移動して調査用具などを取ってきたのち、横須賀線に乗って滞在先まで移動。バスに乗って山の上の終点の終点へ。ここがしばらくの住まいになる。9ヶ月ぶりに机まわりの整理などしているとあっという間に日が暮れ、暗くなった山道を生命線のコンビニまで歩いて夕食を買いに。

心が追いつかず、時差と、翌朝の早い緊張感から、身体がやっと休んだ頃にはもう夜が明ける時刻。始バスに乗って手続きに行き、時間がぎりぎりで半分の目的は達成できないままに電車に乗って山梨へ。お仕事をして、夕方の電車に乗り、また長い旅路を経て終点の終点まで帰ってきた。夜の横須賀線のくたびれた雰囲気。この夜もなかなか寝つけず、しかし心は半分くらい帰ってきていた感触があった。

翌日以降は業務や実験や細かい用事であっというまに時間が経過。子育てから解放された期間で劇的に仕事を進めるぞと思っていたものの、あまりに忙しなく、余白の時間は魂が抜けたようになる。この状況にもだんだん納得せざるを得なくなる。

土曜には山形へ移動。実験のため出る時間が遅くなりつつ、梅雨入り前のぼんやりした気候を楽しむ。久々に人びととおしゃべりをしつつ、すてきな宿に泊まり、翌日はすてきな河原で調査。後ろ髪を引かれつつ、昼過ぎに現場を抜けて、今度は千葉まで移動。夜の京成線の何でもないような雰囲気。狭い部屋の宿にて荷物を受け取り、荷造りをして、翌日、雨の中をシャトルバスに乗って空港に移動した。出かける前にホテルでつけていたサボテンについての番組をもっと観ていたかった。

 

滞在の前半は、夜の電車のもの悲しい雰囲気と、万能感と絶望感が混じったようなよくわからない感慨に染められている。

f:id:tsutatsutatsuta:20220613233157j:image