よるのおわり

日々を愛でる

アフリカの毒

8月中旬の幸せな夏の雰囲気に包まれたデンマークを離れ、ひさびさぶりのアフリカへ。22時半に到着したものの、やたらと時間のかかる手続きに不条理な行列などが重なり、空港を出たのは日付が変わった後。ホテルについてシャワーを浴びて余りのブドウを食べて布団に入ったのは深夜2時だった。最初から、さんざん脅かされてきたこの国の理不尽さの洗礼を浴びた感じ。

両替関連の大きな連絡ミスの後処理を同行者とこなしつつ、大きな格差をまざまざと感じる首都での数日を過ごす。その後、数日かけて大変な行程で森に入り、インターネットの繋がらない環境で3週間の調査。ヤシの葉で天井を葺いたゴキブリの群れる土壁の家、穴を掘っただけ(でもないけれど)のトイレの底で蠢くウジの大群、ソーラーパネル頼みの不安定な電気、満天の星空、昼夜を問わず教会から響く太鼓の音と祈りの歌声、空っぽの豊かな森、マタビシ、大きな格差、などなど。そして、崩壊と構築が混沌と混ざり合う首都に溜まりうごめく膨大な数の人びとのエネルギー。以前訪れた東アフリカの別の国とはあまりに多くのことが違っていた。調査の内容も興味深かったけれど、人の暮らし、豊かさ、自分の価値観、いろいろな考えが根本から揺さぶられた体験だった。

本当に無事に帰ってこられるのか常に半信半疑で、同行者の方々がひとつずつ問題を片付けていくのをお客様の立場で応援しながら、少しずつ足場を確保して次の一歩を踏み出すように、帰国に近づいていった。何をするにも時間とお金がかかり、気だるい雰囲気に呑まれまいと気を確かに保つ。そうした、麻痺した緊張にときたま挟まる、食事やおしゃべりなどのふとした楽しい時間。時間ぎりぎりのイスタンブール空港の乗り換えで、座席に座り、デンマークに帰る飛行機が出発したときには、はじめて本当にホッと安心した。

デンマークでは入国審査が理不尽に非効率的で(途中で係員が交代して劇的に改善した)、50分間ほど並んだものの、この1ヶ月の経験に照らせば実に些細なことに思えた。この「アフリカの毒」に魅了されてしまう人もたくさんいるけれど、私の場合はどうだろうか。

 

1年前やってきたときと同様、デンマークはすでに秋になっていた。

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