よるのおわり

日々を愛でる

氷の島旅行 2日目

翌朝、時差のために早く目覚め、手持ち無沙汰なまま、この街の写真集を眺めたりしつつ、朝食の8時まで一階のリビングで過ごす。こんなだったら朝食前に散歩に行けばよかったかもしれないと思う。そうこうしているうちに朝ごはんが始まる。ごく簡単なパンとハムと野菜とヨーグルトとコーヒーみたいなメニューだけれど、こういうのが意外と好き。たっぷり食べて宿を出て、ガソリン入れに挑戦し、まずはこの街の灯台と廃棄船を見る。マイナーな街で、ほかには観光客など来ていない。なんだかそこが楽しい。朝なので風は冷たい。厚着をしてきて良かった。

車に乗り、さらに北の国立公園を目指す。今日はけっこうな距離を走るのでぼんやりしていられない。ある程度行って長い海中トンネルを越えたところで比較的大きい街の道の駅みたいなところに出る。スーパーを冷やかしつつお昼のためにパンやら野菜やらを購入。外食が高いのとあまり良い場所がないのと移動距離が長いのとで、こういうごはんになってしまう。ベンチでのんびりパンをかじりチョコレートを舐めていると既に時刻は昼過ぎ。Lの手袋もうまく売っておらず、急いで出発する。

そうして走っていると、だんだん景色が壮大になってきて、人家もまばらになる。風が強いのは変わらないけれど、雨が降っては虹が出たりする。壮大な景色のために距離感がよくわからなくなり、ひたすら続く道を、気づくとかなりなスピードで飛ばしていく。ときどき羊が群れをなしていたり、ことさらすてきな景色が広がったりする。苔しか生えていないような岩の平原がずっと向こうまで広がっていたかと思うと、道の脇からほとんど垂直に巨大な岩のような山がせりあがり、上のほうで水が落ちて滝になっていたりする。そんな景色が果てずに続く。

最初の目的地は六角柱の岩の崖。どうやら登れるらしい。Lを抱き上げて崖にへばりつくようにして上まで登ると、風が強くて本当に寒い。しかし崖の向こうは地平線まで広がっているかのようで、手前には湖が見えた。崖の上を伝ってまた別なほうまで行けるようだったけれど、子連れだしとにかく寒いし諦めた。車に戻り、車内でお昼。ほかの人たちも車内でお昼を食べていた。

そこからまた車を走らせる。しばらくして海岸にたどりつき、冷たそうな荒波が暴れているのを眺める。アザラシがところどころに顔をのぞかせる。こんなに寒くて災難である。でも水の中は意外と比較的温かいのかな。アザラシの肋骨と海鳥の胸骨と思われるものを拾ったりする。海は良い。車に戻ると、思わず温かい紅茶を飲み、チョコレートを頬張った。

さて、ここから宿までも実はけっこう距離がある。途中、道のすぐそばにある滝まで歩いて行ったり、黒い教会を写真だけ撮ったりしつつ、道を急ぐ。バン型の車がよく走っていて、外に描かれたペイントなどから、車内で泊まれる小型のキャンプ車のレンタカーであることが判明。宿泊施設は高いし場所も限られるので、観光客にとっては、こんなふうに気軽に寝泊まりができる車の需要が大きいのだろうな。道を走っている車はそれか荒れ道も走れる大型の4WDで、そういう車がびゅんびゅんとばしていく。

Lはいつのまにか眠り、半島の北側に移動するため山を越える。山の上のほうは低地以上に荒涼とした美しい景色が広がっていて、車で先を急ぐのではなくこんなところに腰を据えて何もせずに1日景色を見ていたらなんとすてきだろうなと思う。

山を降りてしばらく行くと街が出てきた。スーパーの冷たい食材ばかりでもさみしくて、宿の近くのおいしそうなレストランを電話して予約。道の途中の観光名所は通り過ぎて、明日来ることにする。レストランが開くまでは時間があったため、街のスーパーの駐車場に車を停め、眠っているLを見つつ、交代でぶらぶらと店の中を見に行く。

レストランはすばらしいところで、伝統に創意工夫を加えた料理はもちろん、暖かい店のなかから冷たい湾を一望して、まるで海の上にいるかのような眺めもすてき(もっとも、私たちの座った子供に優しいソファー席は海に面していなかったけれど)。魚の皮と海藻のチップス、新鮮さの活かされた海鮮スープ、見た目にも美しい羊肉のステーキなど。ワインも飲みたいけど運転があるので我慢。厨房でたくましいコックさんたちがどんどん料理を作り、手をばんばん叩いて料理名を叫ぶと、フロア係の人びとがそれを取りに来る。そんな活気ある光景を見ているのも楽しかった。

Lが飽きてきたのでそうそうに引き上げ、夜道を運転して数km離れた宿へ。荒涼とした原野と夜空がすてき。道の先にぽつんと灯りがついており、駐車場に車を停めて降りると波の音が聞こえた。宿にはガラス張りのサンルームがあり、オーナーの老夫妻はちょうどカレーの晩ごはんを食べていた。部屋は温かく、可もなく不可もなくという感じ。みかんしか食べなかったLにアボカドを切ったりして夕食を与え、シャワーを浴びて早々と眠った。コーヒーで眠りが浅いくせに微妙な時差で朝早く目覚めてしまい、眠りが足りない。夜、荷物を車に入れに外に出ると、さっきまで夜ごはんを食べていた港町が海の向こうにこうこうと光っていた。

f:id:tsutatsutatsuta:20221019153517j:image

f:id:tsutatsutatsuta:20221019153538j:image

f:id:tsutatsutatsuta:20221019153543j:image

f:id:tsutatsutatsuta:20221019153547j:image