よるのおわり

日々を愛でる

氷の島旅行 3日目

朝、早起きして下のリビングに降り、急ぎの仕事を片付ける。休みをとっているのだけれど、そうも言っていられない事態。お茶を淹れるためのお湯もなくて、寒くなってしまう。朝ごはん前にLもRも起きてきて、朝食が終わったらすぐに出られるよう一緒に支度。

Lと先に朝食のサンルームに行くと、すでにけっこう人がいる。子連れは私たちくらい。やはり、奥地の自然を見るのが主な旅行目的になるので、子連れの人たちはそもそもあまり来ないような感じ。名所でも子供はあまりみかけなかった。牛乳をこぼしたりするのを(周りの人たちは温かく笑っていた)ため息をつきながら対処していると、Rが降りてくる。寝不足で疲れが取れず、いらいらしている。良くないと思いつつ、ままならない側面もある。いやはや。

朝食後すぐに宿を出たものの、それでもすでに9時くらい。まずは街のおいしそうなコーヒー屋さんに立ち寄るも、夏のあいだしか空いていない様子。朝食のコーヒーがあまりおいしくなくて、ここですてきなコーヒーを飲むのだ、と思っていたため、残念感がひとしお。まあ気を取り直して先に進む。

すぐに目的地につき、車を停めて三角形の山を見る。昨日の海岸もそうだったけれど、国立公園内の駐車場にはQRコードが貼ってあって、それでWebサイトにアクセスしてカードで駐車代を払う仕組み。払わなくても罰則があるわけではないだろうけれど、国立公園の維持管理費になるなら喜んでと思って支払いをする。川が流れ、小さな滝になっていて、その背景に三角形の山。今日は見事な晴天で、景色が美しい。それだけに、柵を越えて植物を踏み荒らし、立ち入り禁止のところで写真を撮っている人がたくさんいたのは悲しいことだった。

朝から何やら疲れており、魔法瓶に入れてきたお湯でドリップコーヒーを淹れ、チョコレートと一緒に食べた。すこし元気が出る。ここからまた車を運転し、半島の西の端まで。途中で、この島の最初の入植者の井戸と言われる遺跡へ。こんなところまで来る人はあまりいないだろうと思っていたけれど、ほかにももうひと組やってくる。波のうちつける海をすぐ横に、上に氷河を乗せた山を遠くに、びゅうびゅうと風の吹きつけるすさまじいところ。

そこからさらに半島の端を目指し、舗装されていない道に入る。Lはすでに眠っている。小さな石の敷き詰められた道で、あまりスピードは出せない。溶岩がゴツゴツと固まった黒い大地が、くすんだ緑の苔に一面に覆われている。途中、崖の下に海岸の見える景勝地を抜け、さらに先に進み、灯台へ

灯台自体はこじんまりしていたものの、崖の下に荒波がばしゃばしゃ打ちつけて、強風に押されて海に落ちそうな錯覚も抱く。昔、海鳥の卵を獲るために崖を人が上り降りしていたようで、そんな説明のパネルがある。この崖の上り降りは命がけだろうなと思う。Lは、Netflixのアニメで見たパフィンの説明をしてくれる。カモメが卵を食べに来るんだそうな。(後ほど宿で復習したらまさにその通りだった)

この端からさらに半島を回るためには来た道を戻らないといけないようで、あのガタガタ道か〜と身構える。雨もぱらついてきており、ここで降られてはもっと大変。急いで、しかしスピードはあまり出さないで、戻ることにする。また30分ほどかけて舗装路に戻り、アスファルトのすばらしさをかみしめながら道を進む。

街を越え、山を越えて、今度はクレーターに。原野のなかにニュッと噴火口が出ており、階段が周囲についている。登り切ると、半島の端が遠くのほうまで見渡せて、さっき直近で見たと思われる灯台も遠くのほうに見えた。反対側の高地には山がそびえていて、いちばん高いところには氷河とおぼしき白い大きな塊が見えた。

そこからさらに車を走らせ、灯台のそばのビジターセンターで休憩。小さなところだけれど展示内容が意外に充実していて、もっと時間をとって見たいと思う。Lが飽きてきたのもあって退散。子連れだといつもこんな感じになる。けれど、かわいいイラストでアイスランドの自然を紹介するすてきな本が売っていたので購入。物価は高い。

また車を走らせ、浜辺の景勝地へ。この辺りまで来るとだいぶ人が多くなる。観光客がそぞろ歩くなか、冷たい風にさらされながら私たちも崖上の草原を歩き、六角柱の崖のはるか下に荒波が崩れるのを見たりする。車までもどり、まわりのカフェのひとつに入ってカフェモカを飲んで温まる。ここで、朝に逃したコーヒーの物足りなさがやっと回収された。

さらに車を走らせ、後はもう今夜の宿へ。山を越えると街に入り、スーパーで夜ごはんの買い物。そのあとガソリンスタンドで給油。街の崖の上にも灯台があり、登ってみる。夕方の風がもろに吹きつけており、本当に寒い。今夜の宿につづく道は途中から未舗装なので、暗くなる前に着きたい。適当なところで切り上げてまた移動する。

街を出て未舗装の道路に入ると、ほかに車はほとんど見なくなった。Lは眠る。ゴロゴロゴロゴロ…と砂利の音を聞きながら、わりとゆっくり車を走らせる。外は寒いけれど、夕方で光の加減が良いこともあるのか、周りの景色は本当にすばらしい。木のまったく生えていないのっぺりした起伏が延々と海まで続き、しかしあるところから急にせり上がって山になっていたりもする。海と大地の境目はあいまいで、数十平方メートルくらいの小さな島が海岸線に沿ってぽこぽこと浮かんでいる。それが、冷たい弱い光に照らされている。

1時間ほど走ったのち、横道に折れるとじきに建物が見える。周りはけっこう暗くなってきていて、太陽の明かりの最後の数パーセントが残っているような感じ。地図の表示によるとあそこが今夜の宿で、夜になる前に到着できて良かった。駐車場に入ると若いオーナー夫妻が出迎えてくれる。宿の外観がまず印象的で、打ちっぱなしのコンクリートの外壁と大きなガラス窓の使い方がなんだかおしゃれ。内部も同じくすてきで、納屋風のリビングは暖かくて居心地の良い空間。

眠りから覚めてぼんやりしているLを抱えてソファーに座り、オーナーとおしゃべり。ここは昔は農場だったらしく、この建物はトラクターの格納庫で、メインの建物は牛小屋だったのだそうな。レイキャビーク市庁舎を建てたのと同じ建築家がデザインして改築し、住居兼ゲストハウスとしてオープンしたのだとか。古い構造を再利用しており、建築コンテストで入賞したそうな。世界のユニークな建築を紹介するNetflixの番組が好きでよく見ていたけれど、そうした建物と同じような雰囲気を感じていた理由がわかった。床暖房がめぐらされ、天井は木の優しい梁で、海に向けて大きくあいた窓は借景のような感じですてき。各部屋はトラクターの会社ごとにテーマを付与されていて、私たちの部屋はNew Hollandの青色で、ここを建てた建築家がアイスランドで探して撮影してきたトラクターとすてきな風景の写真のパネルが飾られている。

話好きのオーナー(彼女はアメリカ出身で、アイスランド人の夫と結婚して、義両親の持っていたこの農場に来たのだそうな。両親はデンマーク語がしゃべれるとのことだったけれど、なぜかを聞くタイミングは逃してしまった)とおしゃべりしているとLは飽きてきて、夕食もまだだったし、「明日のメインの建物での朝食を楽しみにね〜♪」とお別れする。

ゲストハウスにしてはかなりしっかりしたキッチンでサラダなどの簡単な夕飯を作り、パフィンについておさらいをしながらごはんを食べる。もうひと組フランスの夫妻が泊まっていて、いちど大きくておいしそうなパンを切りにきた後は、部屋でごはんを食べたりしているようだった。実はこの日、暴風雨の警報予報が出て、2日後に一部の道路が封鎖されるかもしれないとのことだった。2日後は東のほうの名所をまわる予定だったけれど、いろいろ検討して予定を変更し、東の名所は翌日に行ってしまうことにした。そうすると問題になってくるのが移動距離で、翌日はできるだけ早く出たい。宿の朝食はけっこう遅くて8時半とのことだったので、朝食はスキップして宿を早く出ようかなどと話をしていたけれど、朝食の場所であるメインの建物の改築の話を聞いたりしているとやはり朝食をここで摂りたくなり、結局、ゆっくり出ることにした。そのため夜もそこそこゆったりして、溜まってきた疲れを癒した。

f:id:tsutatsutatsuta:20221020192649j:image
f:id:tsutatsutatsuta:20221020192639j:image
f:id:tsutatsutatsuta:20221020192643j:image
f:id:tsutatsutatsuta:20221020192628j:image
f:id:tsutatsutatsuta:20221020192632j:image