よるのおわり

日々を愛でる

アイストンビ

朝4時に起きて空港へ。旅行客でけっこう混んでおり、ヨーロッパ内のフライトは朝早くから発着するのだなということを知る。バケーションシーズンに突入してきた感じか。4月のワークショップのときと同じくヒースローに着き、お仕事をしながら時間を過ごす。昼過ぎにゲートが表示され、バスに乗せられて飛行場の端に行き、飛行機に乗ったものの、ここは圏外。しかし、ドローンが飛んでいたとかで飛行機の離陸が1時間ほど遅れ、そのあいだに一瞬だけ電波が入ったりして、出かけるよ報告を送信したり、プロファイルをダウンロードしたり。海外の人が大半でほぼ満席。みんなCOVID-19のあとでやっと海外旅行に出る人たちなのだろうな。
飛行機が飛ぶと、隣の席のイギリス紳士が「なぜ自分は真ん中の席なのか、けしからん」といった感じに真ん中で前後に分かれてしまった妻君に文句を言っている。そのうち添乗員さんたちにも文句を言っており、ワインのボトルをもらって引き下がっていた。この人、白人とそれ以外に対して態度が違い、私の方にも躊躇なくはみ出してくる。消灯した後もずっと本を読んだり映画を見たりしており、私の体に肘や肩がしょっちゅう触れた。身体にそうした接触があると、夢の入り口で非現実世界に分裂しつつあった私の意識はふいと現実に引き戻され、眠気もあっというまに遠ざかってしまった。身体感覚がこんなにも意識に影響するのだなというありがたくもない発見をしつつ、浅い眠りをさまよった。13時間が過ぎ、まあなんとか着陸し、けっこう涼しい日本の地に解き放たれた。
近くの駅に行って商店街を抜けて作業着を購入し、戻って駅中で買い物し、職場に向かう頃にはもういい時刻。お昼も食べてないのに。仕方がないのでバス待ちの間にアイスモナカを食べていると、目の前に急に黒い物体が現れて、確かな重みとともに食べかけを奪っていった。トンビにやられた…。指先に怪我をしてしまい、慌てて近くのコンビニに行って石鹸で洗わせてもらう。左手は自分の包丁で切り、右手はトンビに傷つけられ。呆然として「すごいですね…」と言ったのを周りの人びとは無視するか蔑むように目を逸らすかで、ああここは確かに日本だ…と悲しい納得をしたのだった。
バスに乗って職場につき、あれこれやっているともう寝る時間になった。いつもこんな感じだな。