よるのおわり

日々を愛でる

ホリデーホーム(後編)

木曜、けっこう冷え込んで寒い。ゆっくり起き出してきて、冷凍クロワッサンをオーブンで焼く。朝ごはんを食べたあとは自転車に乗ってお出かけ。砂に埋もれた教会を見に行く。塔の部分だけが残っており、内部を上ると平原の部分がよく見渡せた。後ろの座席に乗るだけのLは冷え切っており、しかし頑なに長ズボンを履こうとしない。おやつを食べて休憩。
このあとどうするかということになり、Rが行きたいと言っていたスケーエンの美術館のカフェへ。自転車を漕いでゆるゆると向かい、昼前にカフェについて休憩。ガンメルなアップルケーキとラテ、味は普通。
電車がそろそろ出そうということで、駅に向かって自転車を漕ぎ、自転車を積み込んで帰宅。家で食材を消費すべく適当なお昼を作って食べる。
午後もせっかく天気が良くなってきたしということで自転車に乗って出かける。南の街と、そこに行く途中の海辺の景色をもういちど見てみたいと。海辺ではちょうど晴れて、砂浜と草地の光景がきれい。浜辺にはテントをはって一日中のんびりしていると思われる人たちがポツポツとおり(停まっていた車のナンバーからするとドイツの人が多いようだった)、その人たちに混じってLは喜んで貝を拾っていた。
自転車に乗ってさらに先に行き、街へ。カフェで休憩したあと、スーパーに行って缶などのデポジットを返却し、返ってきたクーポンでこっそりLのための本を購入。サマーハウスにこのバックナンバーがたくさんあり、Lは熱心に見入っていた。帰りの電車でも見入ってくれることを期待しつつ…
帰りは森の中を通ろうとしたけれど、道を間違えたようで目指すところに行かず。けっこう遠回りして、だいぶ疲れながら長い道のりを帰宅。Lが眠ってしまい頭がぐらんぐらんして自転車が倒れそうになり、けっこう大変だった。家に帰ると庭にウサギがいた。

あとは、ささっと作った夕食を食べ、ワインの残りを消費して、寝るだけ、と思っていた夕食後、Lが頭が痛いと言い始める。詳しく見ていたRが髪のすきまの表皮にダニを発見。森の中には牛や馬がたくさんいて、どこかでヘルメットにくっついたのが頭皮に移ってきたのだろうな…。爪の先でつまんで取ろうとするも、吻部は皮膚に食い込んでいて取れそうにない。体は潰れて吻部だけ残った状態で、感染症も怖いしということで医者に行くことにする。緊急電話にかけるとすぐつながり、最初は「バターでもつければ取れるのでは?」とか言われていたところを病院につないでもらう(バター?と思わず聞き返してしまった)。そして22時半の病院の予約となる。
フレデリクスハウンの街まで、30分後の電車で30分。駅から歩いて10分くらいで病院に着くと、2組くらい待っている人たちがいる。じきに順番が来て、物腰の柔らかいお医者さんに診てもらう。「体は取れているので感染の心配はこれ以上ない。吻部は今外すと痛いしそのうち外れるので大丈夫。ライム病には気をつけて、2週間は毎日状態の確認をしてね」ということでそのまま帰される。さすが簡潔な医療。こんな夜中にごめんなさいね…と思いながら病院を後にし、ひとまずは大丈夫という安心感でほっとする。
終電からひとつ前の23時の電車で家に向かい、駅に降りると辺りは真っ暗。懐中電灯を持ってきて良かった。星空を眺めつつ家に帰り、翌日はゆっくりしようね…と言いあいながらすぐに眠る。

翌日は実質的な最終日。食材を消費するため朝ごはんも工夫し、最後にということで自転車に乗って散歩に出かける。昨日行けなかった森の中の道を走る予定。しかし、道を間違えて変なところに出てしまい、それの場所からアクセスが良かったこともあって、西側の海岸まで出ることになった。けっこう寒いけれどだんだん暖かくなってくる気候の中、まだつかないのか…と連日の自転車の疲労が溜まった体をがんばって動かしていると、森が途切れたところで向こうに海が見えた。そして最後は下り坂。ひゃっほいと海までの道を下り降りる。(坂らしい坂はこれが初めてだった気がする。本当に平らなのだな…)

北海はずーっと広がっていて、砂浜を歩くとピクニックをしている人たちもいた。けれど風が冷たい。とても夏とは思えないけれど、大丈夫だろうか。第二次大戦の遺構が波に洗われていた。
今日はすぐおうちに帰るだろうと予想していたこともあって、食べ物なんかはきちんとは持ってきていない。この近くのオートキャンプ場にスーパーがあるらしいとGoogleマップで調べて、行ってみる。ちなみに、高台からみたキャンプ場には満員の駐車場のごとくに数百台のキャンピングカーが停まっていた。夏休みだな。しかしあんなに狭い間隔でくつろげるのだろうか。
スーパーは家族経営らしいところで、品揃えがふだん見ないものでおもしろい。値段は観光地価格か。クラッカーとチョコレートと、どうしても食べたいというLのアイス(見るからにまずそうな毒々しい見た目をしており、たぶん美味しくないよ…と言いつつ購入)。店の外のベンチでアイスとクラッカーを食べる。アイスは想像通りのひどい味がして、アイス好きのLですら途中で食べるのをやめていた。
そこからがんばって自転車を漕いで帰宅。同じ距離を戻るので、すなわち行きと同じくらい時間がかかるのかとすこしげんなり。帰りは向かい風で、雨がぱらつき、Lが眠ってぐらんぐらんしたけれども、なんとかおうちに到着。食材を消費するお昼を作り、お家の掃除と荷造り。掃除機をかけたり拭いたり洗ったりして、ひとまずなんとかなりそうという見通しが立った。そこで、おやつにポップコーンを焼き、千と千尋の神隠しの続きを見た。
時間はゆっくり流れて夜になり、食材消費の夕飯を作って食べ、明日は早いので早めに寝た。

最終日、少し早めに起きて朝ごはんの準備をして片付けの最後のステップを済ませ、朝ごはんを食べ、8時前に家を出た。本当に快適ですてきなおうちだった。

10時前にオールボーに着き、冬には行くことのできなかった現代美術館へ。アアルト設計の広々として真っ白のすてきな建物のなかで作品を見て、Lは子供スペースで遊び、お昼前にカフェで軽くごはんを食べた。カフェは雰囲気もよく味もおいしく、申し分なし。そのあとは庭に出て彫刻群のなかで遊び、最後にもういちど展示を見て、美術館をあとにした。駅まで歩くともう結構な時刻で、スーパーで食べ物を買ったりしてのりこみ、電車にさらに4時間乗って帰ってきた。行きと同様、電車はかなり混んでいた。

疲れたLが眠った隙に、Rといろいろなおしゃべりをして、この休暇中、いつも以上にみんなと親密な時間を過ごしたなと感じた。こんなに真剣に遊びたくさん休んだのはいつぶりだったろうかということを思い、休暇を経て心が温かくなってリフレッシュしているのを感じた。機会があるかわからないけれど、ぜひまたサマーハウスで休暇を過ごしたい。

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