よるのおわり

日々を愛でる

オンサイトの研究会

こちらに来て、オンサイトの研究会にとても久しぶりに出た。COVID-19でしばらくみんなオンラインに移行していたし、その前は育休を取っていたりして、いったい何年前に出たのが最後のオンサイト研究会だったのかもはや思い出せない。

まあとにかく、オンサイトである。朝から会場を探して歩くときになかなかみつからなくて、雨も降ってくるし寒いし、そこまで興味のある内容でもなさそうだし、もう帰るか…といったお決まりの逡巡を心の中でする。運が良いのか悪いのか、会場は結局みつかり、帰る口実もなくしてしまう。
受付で登録を済ませて、自分の名札をもらう。お茶やコーヒーにパンなど(こちらのほうではそういうものを出してもらえる)を横目で眺めつつ、まずは後ろの方の目立たないところに席を確保。コートを脱いで、ゆったり歩きながら会場の様子を観察しつつ、入口のところに戻ってクロワッサン(非常においしくて、これだけで今日来たかいがあると思った)や紅茶を確保。席に戻り、自分のPCを開いて、メールチェックなんかをしながら始まるのを待つのだった。
今回は、おもしろそうだし長期的に役に立ちそうな内容の研究会だけれど、専門ばっちりというわけでもなく、真剣味は比較的薄い。あまりにも関係ない発表では、ノートに研究アイデアを書いたりしながらなんとなく聞き、デンマーク語でまったく理解できない発表では、PCを広げて別な仕事をしたりしながら参加していた。
環境が整っていないこういう場所のほうが、ふだんなかなか着手できない作業を進められたり、ふとした瞬間に良いアイデアが浮かんだりして、仕事の効率が何やら変化するような気がする。聞いている発表のほうにもおもしろい視点やデータがあったりして、思わぬ出会いがある。こういうふだんとは違う時間というのは、オンサイト研究会に特有のものだと思う。それと、こちらの研究会ではお昼も出る。会場内は混んでいて座る場所もなく、寒いなか隣の公園に出て行って食べている人もいたけれど。

最近はオンラインのセミナーが増えて、仕事部屋から一歩も外に出ることなく、国内や海外の研究会に気軽に参加できるようになった。けれど、画面越しでは臨場感に欠け、なんというか、参加するというよりは、情報を摂取するというような感じになる。本当に大事な情報であればしっかり聞くけれど、そうした情報は案外少ない。というより、情報を仕入れるだけなら論文を読むのが結局はもっとも正確で密度が濃くて再現性が高い。こんな時代になる前は、オンサイトの研究会には情報を仕入れに行くのだと思っていたけれど、実はそうではなく、その空間や時間の流れを全身でまるごと経験しに行くことに意義があったのかもしれないと思うようになった。
デンマークでも感染数が拡大してきているため、今後はこうした機会がなくなってしまうかもしれないけれど、久しぶりに出たオンサイト研究会は、体に染み渡るようなものだった。

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