よるのおわり

日々を愛でる

ジャスミン

スクーターで走って帰ってくる途中に,なんだかいい匂いにあふれた通りに出くわした.住宅街の裏道,ほかに車はまったく走っていない.夕方のほの暗くなりかけた光のなかで,そういえば,道の両端の植え込みがぽつぽつと白い.よく見ると,葉っぱの小さな,…

金色の光が緑に染まる

東京は,5月にしては記録的な暑さだったのだそうな.痛いような陽射しがつくった陰に身を縮こめて,吹き抜けていく風に汗を乾かしながら,「どうして葉っぱはあんなに柔らかいのに,風に揺れて森がふるえるときには,あんなに乾いたサラサラする音が聞こえる…

一瞬だけの光

バスの窓から見上げたマンションの7階くらいのところに、鳥よけのCDがたくさんぶら下げられていて、夕暮れの光をきらきらと反射していた。 電車の外には、遠くに、魚の皮膚みたいに光る空があって、淡い色の雲が細くシルエットになっていた。窓の外に過ぎて…

木の下

ゴールデンウィークの終わりの頃の夕方,近所のスーパーから家に帰る途中,家のあいだの空き地にふと目をやった.奥に小さな木があって,その下に机があって,ごく軽装の,おじいさんと若い男性が,ふたり向かいあって,将棋か何かを指していた.また別のと…

ブルーの日

夏のような暑さで、暖められた空気が強い風になって吹いていた。布団を干したけれど、布団干しごとめくれがって内側に落ちてしまったため、布団を干すのは諦めてしまった。 近所の初めて通る道を迷いながら郵便局に向かい、ああ暑い、ぜんざいでも食べようか…

口をすすぐ場所

チョコレート味のするペーストで歯を磨きながら、口をすすげる場所を探していた。しばらく滞在しているホテルのロビーを通り抜けて、やや裏口感の漂うドアに入り、山と積まれた古着やボロ布の丘を這い上がり、端にある汚い部屋にたどり着いた。 ここに、洗面…

春のスキップ

3月から4月にかけてあちらこちらをとびまわっていたのだけれど,「季節をひとつ飛ばしちゃってないですか?」と人から言われて,ああたしかに…と気づいてしまったのだった.思えば,今年は,春らしい春を体感できていないような気がする.しかし,飛ばしたぶ…

ハト

滞在先のホテルの部屋は3階にあって,街の死角のような,建物に挟まれた狭い空間が窓から見える.もう1階分低い建物の屋根がこの空間の床になっていて,舞台のように見える.東に向いたほうには建物がなく,朝日がさし込む.しばらくずっと冷たい雨が降って…

引っ越し

夜と朝かかってやっと荷物をまとめて、テーブルを解体してカーテンを外した部屋の床に座った。ふと、何にも邪魔されない窓の外を見ると、ベランダの手すりには、昨夜降った雨の残りが水滴になって垂れ下がり、その向こうに青い空と白い雲が見えた。遠景には…

春の闇

なんだかすてきな夢を見て、ぬくぬくとして気持ちの良い眠りから目覚めた。夜中に一度起きて、その気持ち良さに存分に浸りながら、手洗いに立ったような気もする。 起きてから、夢の内容を思い出そうとしたのだけれど、どうしても出てこない。夜中に一度起き…

春の宵

夕闇が染み渡ったあとの御所と鴨川をぶらぶらしながら帰ってきた。 御所の松は大きくて、複雑な影を空に投げかけていた。雲が一面に覆いをして、でもなんだか明るくてあたたかい空だった。人は通らず、車の音もここまでは聞こえず、右手で押す自転車の車輪が…

前準備

今日は、日中の日差しがだいぶ暖かくなっていて、空気がもう少しゆるんできたら、もう春と言っても差し支えないような頃合いになってきた。久々で職場に来たから、お昼も準備していなかったし、食料のストックも何もなかったので、まあ、これはちょうど良い…

強行軍

朝早く東京に移動したのが,まだ2月の頃だった.スーツケースを持って電車で移動するのは久しぶりのような気がする.新幹線はあっという間に着いてしまい,11時には,見晴らしの良い部屋から外を眺めつつ,作業を開始する態勢ができていた.朝は雨が降ってい…

ワニアザラシ

プールの中に,ワニとアザラシを足したような生き物が飼われてる.口ばかりやたらと大きくて,円錐形の胴体に,四肢はほとんど目立たない.「ワニワニぱっくん」の印象そのままの.プールサイドにあがって口を開けているところに,手を突っ込んで,口の中の…

書くこと

書くということは、制限も正解もない真っ白なところに、自身の感覚と論理を頼りにして、よく見通せる眼でもって、確かなものを組み上げていく作業であるなあと思う。表現の楽しさと苦しさがあって、それは研究というのも同じことだな。 (3月の終わりまでこ…

本日の夜ごはん

スーパーで安売りしていたダシ巻き卵を切って,薬味のネギをのせて,醤油をすこしだけたらして,七味をぱらぱら.それと同時に,九条ネギを刻んで,ゴマ油に八角と花椒を散らした鍋で焼き色をつけた.塩も少々.そこにお湯を入れて,鶏ガラスープで味をつけ…

自転車に乗りながら、何かが目に入って、視界のまわりの感覚がもさもさする。 虫…?と思いつつ角を曲がると、自動販売機の光に照らされて、雪がすらすらと舞っていた。なるほど… 対向車のヘッドライトに照らされて、また、雪が見える。雪は、光があるところ…

道路1本隔てた横には冬の海が広がっており,その道路に面したホテルの裏庭には,公園が広がっていた.ホテルというよりは家という感じで,2階建てのこじんまりした,でも居心地の良いところ.部屋の窓は公園に面していて,噴水のある大きな池を芝生が取り囲…

郊外

キャンパス街の外れの,ほとんど郊外と言っても良いような場所.セントラルヒーティングで暖かい建物の,最上階の部屋で食事を摂るために,地下の共同キッチンとのあいだを行き来する.エレベータなんかはもちろんなくて,ふかふかした階段を登り降りする.…

2017年

おととし (2015年) はわりと苦難の年で,2014年までの成果を回収したあとには,ただ長いスランプが続いた.形に残るものを何もつくりだせず,将来のための施策の数々がばかみたいに初歩的な部分でつまづいていたことを発見し,私にとっての仕事の意義をわり…

大晦日 その1

朝早めの時間に家を出て,東京ビッグサイトへ向かう.知人の出展のお手伝い.しかしとにかく人,人,人!! 7時半過ぎの国際展示場駅,入場規制がなくなった後の会場,会場から駅までの道,いろんな人が,川が流れるように,あっちこっちに押し流されるよう…

大晦日 その2

お仕事で遅くなって19時を過ぎた通りには、普段の5分の1くらいの人通りしかなく、急いで駅に向かう。電車を乗り継いで1時間ちょっと、海のほうの街に降り立つ。 駅から友人宅まで、バスは出ているみたいだけれど、せっかくなので歩いてみる。Googleマップで…

ススキ

季節外れの台風のような強い風が吹いていて,もう少しで雨が降り出すところだった.海に面した駅に電車が止まって,山側のドアが開いて,高い石垣の壁の手前に道路があり,道路と線路を仕切るガードレールがあって,そのガードレールの下から枯れたススキが…

高瀬川

銭湯の鏡に貼ってある広告を見比べているときだった.鏡の下部分10 cmくらいのところに,帯状に貼り付けられている,あの広告.私が見比べていたのは,韓国系の教会の広告で,なぜわざわざ隣り合った鏡に同じものを貼るのだろう…?とふと疑問に思ったのだっ…

おさる

突然「チンパンジーがネギ好きなんだ」と恋人からメッセージが来る.動物園で観察していた限りでは,タマネギは好きそうだったけど,ネギは食べているのを見たことがない.…ネギを食べさせちゃいけないペット動物もいたような…イヌだっけ.そしてそんなこと…

鴨川

冬とは思えないようなぬるい曇りの日,川岸を歩いて下っていった.15:05 カラスが足を水につけて,川のなかに佇んでいる…そして行水.今日は暖かいからな…15:09 白いサギが2羽,まったく同じ動作で川のなかをそろりと歩く.15:10 イヌを抱えたおばさんが跳び…

モツ

銭湯に行こうと思ったものの,案外暖かくて,まあまた今度で良いか…とそのままスーパーに向かった.冷蔵庫のなかには訳あり品の割引で買った緑色のパプリカが入っており,これをなにかと調理して,翌日のお弁当のおかずにしたい.スーパーでは,モツのパック…

2016年に読んでおもしろかった本

今年は,論文を読んでばかりで,あまり本を読めなかった.来年はもっと読めると良いのだけれど… バルガス・リョサ (木村榮一 訳) 『緑の家』 複雑に絡み合って展開される物語のなかから,少しずつ全体像が見えてくる.まるで密林の茂った木々をかき分けなが…

ムーアの一週間

その研究所のある一帯を,私はムーア (moor) と呼ぶことにした.一週間を通いつめて,実験やら測定やらをしていた.最寄りの駅からはバスで20-30分,研究所の目の前のバス停は,終バスの時間が18時.それを逃すと,歩いて20分離れた病院 (別のバス停がある) …

密度

冬の空気は密度が高くて硬いから、アルコールくさい吐息も、上滑りする喜怒哀楽も、私のところまでは届かない。